プチ鹿島の連載コラム 「すべてのニュースはプロレスである」

 「笑っていいとも!グランドフィナーレ」での、お笑いアベンジャーズ集結とでも呼ぶべき奇跡。共演は不可能と思われていたヒーローたちが同じ「絵」におさまった。あの興奮や「どんな事情でこうなった!?」と今後語り継がれるであろう各自の想像や詮索・見解。それはすべてプロレスである。プロレスの醍醐味である。

 そもそも主役のタモリさんがあの光景を見て「これ・・プロレス?」とつぶいやいていた。その前に「すごい」と漏らしていたので、国会の乱闘とかの際に使用されるネガティブな意味ではない。「ホントにこのリングに揃っちゃったの?何が起こるの?」という、正しい意味での「プロレス」だ。というか、この言葉の解釈だけでも盛り上がれるのがプロレス者である。

 「いいとも!」だけでもじゅうぶんプロレスを味わえたが、あの夜に同時間帯で放送されていた「有吉反省会2時間スペシャル」も忘れてはならない。世間が浮かれているときに裏で何が起きているのか。「裏」の存在にこそ注意を払う。プロレスファンという、世間から隔離された空間で咲いたマイノリティーの習性である。テレビディレクターの香川春太郎氏は『いいともグランドフィナーレの裏で日テレではコレをやっていた。プロレスファンの俺としては、東京ドーム「ターザン山本 夢のかけ橋」vs後楽園ホール「長州力&天龍源一郎WAR」同日興行戦争レベルの興奮。』とツイートしていた。

 「ターザン山本 夢のかけ橋」とは、週刊プロレス(ベースボール・マガジン社)が主催した1995年の東京ドーム・オールスター興行である。出場しなかった長州力&天龍源一郎は同じ日にすぐ隣の後楽園ホールで興行をやり、こちらも盛り上がったのだ。

 今回あの構図を香川さんは思い起こしていたことになる。プロレスとは記憶を楽しむジャンルでもある。偶然にも私も天龍を思い出していた。天龍にはもうひとつ、裏で意地を見せた日があるのだ。

1989年、格闘技路線で人気を呼び、社会現象にまでなった「UWF」が遂に東京ドームにたどり着いた。これを見なければプロレスファンじゃないという記念日。しかし、その「裏」で、遠い札幌で、当時「全日本プロレス」に所属していた天龍は初めてジャイアント馬場からフォール勝ちをしたのである。天龍の意地。今となっては「札幌事変」は「UWF」の東京ドームを上回る逸話として語られている。

「いいとも」の裏の「有吉反省会」も天龍的なおもしろさがあった。梅宮辰夫のお面をみんなでかぶり、泰葉を復活させ、「はねだえりか」の微妙な改名問題を語る。クライマックスは猿岩石にヒッチハイクさせた「電波少年」のT部長(土屋敏男)に十数年ぶりのリベンジ。

「お祭り」の裏でそんな刺激的なことをやっていた。

ちゃんと気づいて見ることができたのも、プロレスのおかげである。


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