4月10日、NPB(日本野球機構)は記者会見の場で、今年の統一球の反発係数の平均値が、規定値を上回っていたことを明らかにした。

「NPBは3月29日に行われた試合を抜き打ち調査しました。6球場から試合の使用球を抽出し第三者機関が検査した結果、ボールの反発係数の平均値が0・426と、規定の上限である0・4234を上回っていたことがわかったんです」(全国紙運動部記者)

実際、すでに消化された試合でも巨人が開幕5試合で77安打とプロ野球記録を樹立。

野球の華とも言えるホームラン数も、「昨年の開幕からの全33試合での総本塁打数が28本だったのに対して、今年は全32試合の時点で53本も出ているんです。ほぼ倍増したといえる状況に、"また飛ぶボールになったせいでは?"と、選手の間でも話題になっていたようです」(前同)

中でも、すでに9本(4月17日現在)のホームランを打つなど、昨年以上のペースで量産しているバレンティンなどは、「飛ぶボールに感謝」などと、ジョークを飛ばしていたほどだ。

こうした事態を受けて、楽天の星野仙一監督は、「こんなことをしていたら、プロ野球への信頼がなくなってしまう。危機管理がなっていない」と、NPBの意識の低さを激しく非難。

試合での成績が、選手の年俸に直結する事態だけに、"飛ぶボール問題"は深刻だという。

「試合で"飛ぶボール"を使用するのは、バッターにとっては朗報ですが、投手にとっては迷惑な話です。本来なら、詰まらせたり打ち取れたはずの打球が、ヒットやホームランになってしまうんですから、たまったもんじゃありません」(スポーツ紙デスク)

しかし、この投手受難のプロ野球界に、「飛ぶボールなど関係ない」とばかりに結果を出している投手もいる。

その代表格が菅野智之(巨)、小川泰弘(ヤ)、則本昴大(たかひろ)(楽)の3人だ。

「菅野は開幕から無傷の3連勝。驚異的な数字をたたきだしています。また、プロ入り後の最速となる153キロのストレートも記録しました。コントロールの良さと、切れ味のあるカットボールで芯を外す投球術で、打者を翻弄しています」(前同)

芯を外すだけでは通用しない

一方、小川も開幕から無傷の3連勝。

「特筆すべきは往年のメジャーリーガー、ノーラン・ライアンを参考にしたという、左足を大きく上げる豪快な投球フォーム。ちょくちょくランナーを背負うんですが、より大きく足を上げる強気のピッチングで、後続を断ち切ります。ライアン小川の異名は伊達じゃありませんね」(専門誌記者)

変わったフォームと言えば、則本も"上を向いて投げよう投法"と称される変則的なフォームから投げ込まれる154キロの剛速球で2勝1敗と奮闘している。

このように、バットの芯を外したり、打者を惑わせる変則フォームの持ち主が、飛ぶボールでも健闘しているように見える。

だが、野球評論家の橋本清氏の意見は少し違うようだ。
「実は飛ぶボールというのは、多少、芯を外してもスタンドに持っていかれるから厄介なんです。実は彼らが好成績を残しているのは、芯を外す投球をしているからではないんです」

ならば、何が優れているのか。
彼らに共通するのは「伏線の張り方がクレバー」だと、橋本氏は言う。

「たとえば、菅野がすばらしいカットボールを持っていることは事実ですが、それだけでは、打者を打ち取ることはできません。カットボールを投げる前に、必ずシュート系のツーシームなどをインコースに投げて、打者の意識をインコースに集中させ、決め球としてカットボールを投げる。だから、打者が空振りしてくれる。つまり、強気でインコースを攻められる投手であればあるほど、成功するということです」

これは、則本にしても小川にしても同様だ。

「3人に共通するのは、インサイドを攻める強気のピッチングができること。その向かって行く姿勢が、いい結果を出しているということです」(橋本氏)

22日から規格に適合した球が納入されるというが、そうなったら、"飛ぶボール"をものともしなかった彼らがどれほどの活躍を見せるのだろうか。

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