トヨタ、日産、ホンダ、スズキなど国内には世界に冠たる自動車メーカーがあるが、そのなかで1994年にメーカーの認定を受け、国内最後発となる自動車メーカーとなったのが、富山県に本社のある光岡自動車だ。少量生産されるミツオカのクルマたちは、どれも旧き佳き欧州車イメージの個性的なデザイン。細部に渡る質感の高さも手伝い、マスプロダクトにないオーラに満ちている。

そんなミツオカのフラッグシップであるスポーツカー「大蛇(オロチ)」が、7年間の販売に終止符を打つ。今年10月からの保安基準への対応や、エンジン供給のストップによるものだという。

オロチが初めて世に出たのは、2001年の東京モーターショー。低く、うねるような驚愕のボディデザインは来場者のド肝を抜いた。
「メーカー認定を受けて以来、01年は我々にとって初のモーターショーでした。当時の国内メーカーはエコカーに力を入れていて、子供達が目を輝かせるようなモデルは少なかった。ならば、我々がクルマにときめきを与えようじゃないか、ということで『ものすごいスーパーカー』を出そうということになったんです」(光岡自動車広報・笠原氏)

出典当時販売予定はなかったが、反響の凄まじさから市販化に向け開発がスタートした。紆余曲折の末、07年4月に販売が始まったが、その車体構成には日本人特有の気遣い、消費者本位の考え方がにじむ。
「デザインから、ランボルギーニやフェラーリなどの高級スポーツカーに分類されがちですが、オロチはトップエンドのスピードやサーキットでの速さを求めたクルマではありません。エンジンはレクサス系の3.3リットル、ミッションはATです。さらにバケットシートも乗り心地を優先しています。高級スポーツカーにありがちな街中での扱いにくさを一切排除し、かつライフサイクルの長さも考えた、ラグジュアリー・カーなんです」(同・笠原氏)

今までに130台近くを販売したが、その扱いやすさ、ランニングコストの低さから、女性オーナーや中間層への販売も多かったという。
「開発スタートから足掛け14年、その間にメーカーの垣根やビジネスを超えた協力がありました。『このクルマがナンバー付いて走ったらすごいことになる』…オロチは、そんな開発者とお客様、みんなの想いの結晶だったと思います」(同・笠原氏)

ちなみに、14年ファイナルエディションは限定5台中4台が予約済み(5月2日現在)だという。ニッポンの小さなメーカーの大きな情熱が作り出した、希有な名車であるオロチ。手に入れたい御仁は、一刻の猶予もないぞ。

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