やはり寿司だった!

「去る4月23日、国賓として来日したオバマ米大統領は、安倍晋三首相と銀座の寿司店『すきやばし次郎』で会食をしました。"人生で一番美味(おい)しい寿司だ"とオバマは喜んだそうです」(全国紙政治部記者)

東京23区に厳戒態勢を敷いてまで、世界のリーダーが食べたかった(!?)"和食の王様"、それが寿司。

今回、本誌は「好きな回転寿司ネタ」アンケートの結果(右下表)で、高級なエンガワはさておき、王道の"中トロ"を抑え、2~4位に入った安旨(やすうま)ネタを特集。

適度に脂が乗り、滋味深いサバ。
ジューシーな厚みを堪能できるイカ。
贅沢に舌の上でとろけるサーモン――

あいつらは、なぜ安くてウマいのか?
"美味しい秘密"に迫る!

「なんといっても、回転寿司ではウニよりサバ!」と断言するのは、『TVチャンピオン』(テレビ東京系)第4代、第5代のB級グルメ王・柳生九兵衛氏だ。

「ウニは原価が高く、100円前後の回転寿司なら、軍艦の上にほんの少し乗っている程度。それなら、肉厚なサバを食べたほうがうんとウマいし、満足感も得られる。サバは品質が安定していますね」(前同)

安価ゆえ、どの回転店でも気おくれすることなく頼めるサバ。

「庶民に愛されるのも、光モノの中では圧倒的に脂が乗っていることが大きな理由でしょう」(同)

お得感バツグンながら、サバは足が早く、鮮度が重要でデリケートな魚。
しかし、心配するなかれ。

回転寿司店の中には、市場を通さず、港から産地直送で青魚を仕入れる、こだわり店が増殖中なのだ。

『TVチャンピオン』の「回転寿司通選手権」優勝者で、回転寿司評論家の米川伸生氏は、こう言う。

「最近は生サバブーム。原価が高く、仕入コストが上がっていて、店の利幅が落ちています」

つまり、客にとってはメチャクチャお得!というわけで、回転寿司店に来て、さっそく生サバを試食……ウマい!

「〆サバも、独自に締めて提供する店舗が増えつつあります」(前同)
おお、いいですね。

そもそも、サバは保存食。
京都と若狭湾を結ぶ「鯖街道」は、若狭湾で取れたサバを塩漬けにして運んだことが由来。

若狭から運び、京都に着く頃には、ちょうどよい塩加減になったという。

では、〆サバをいただきます……さっぱりしてるのに、口内にジュワ~ッと旨味が広がっていきますッ!

「自前で仕込む回転寿司店が多いので、バッテラ(〆サバの押し寿司)も、当たりが多いですよ」(同)

B級グルメ王の柳生氏も、自身の"バッテラ愛"をこう説く。
「なかでも、『すし銚子丸』の『さば棒すし』は本当にすごいんです。安いのに(税別で934円)、驚くほど肉厚で、そのうえ、竹の皮できちんと包装されている。1500円出しても食べたい逸品ですよ!(現在、サバ不足のため、販売見合わせ中)」

バッテラはテイクアウトできる店舗が多くあるので、簡単なお土産にもぜひ活用したいところ。
ただ、魚もご飯も固くなってしまうので、長時間の冷蔵庫保存はNG。

ちなみに、バッテラの語源は、ポルトガル語で小舟を意味する「bateira」
……似ているか!?

加えて言うなら、サバの語源は、小さな歯をたくさん持つことから「小歯(さば)」。

「回転寿司店でサバを好むのは、女性、子どもよりも圧倒的に男性が多い」(柳生氏)

ように、漫才師でタレント、作家の島田洋七師匠も、「サバが、めっちゃ好きなんですわ」と、サバに心を奪われているという。

洋七師匠が少年時代、玄界灘に面した佐賀で、祖母(がばいばあちゃん)に育てられた話は有名だが、「ばあちゃんが、サバは焼いてもええし、煮てもええ、干物にしてもええ、と、よう言うてたからね。実際に食べてみたら、これがまた何でもウマい」(前同)

ちなみに、回転寿司で使われるのは、主に真サバとゴマサバ。
近頃は、ブランド寿司として回転寿司でも関サバなどが注目されている。

しかし柳生氏は、これを一刀両断。
「ブランドを気にしすぎたり、ブランドをありがたがりすぎているように感じますね。実際、偽物の関サバも出回っています。関サバとは、大分の佐賀関で水揚げされるもののこと。同じ魚でも、近くの別の港で上がるだけで関サバじゃなくなるんです」

続けて、洋七師匠も、「関サバは寿司ネタとしては合わんような気がするね。サバは、やはり新鮮な真サバやゴマサバに限る」

ブランドの魔術に騙されてはいけない!!

安価なサバも調理でさらにウマくなる。今回、本誌記者は"炙りサバ"の握りを初体験。炙りサバは香ばしくて奥行きがある味で、感動しかありませんでした!

イカは耳を使って空を飛ぶ!
さあ、次のネタに移ろう。
日本が世界一の消費国とされるイカ。
年間約70万トンと、世界の漁獲量のほぼ半分が日本人の胃袋に入っている。

しかし、ひとくちにイカといっても種類が豊富。
今が旬のアオリイカ、これから旬を迎えるヤリイカ、イカの中で最も消費量が多いスルメイカ(真イカ)、一時不漁と報じられた富山湾名産のホタルイカなどだ。

イカの場合、食べる部位によって好む年齢層や性別に違いが出てくるのも特徴のひとつ。本体(身)を食べるのは女性と子ども。

男性は、それ以外の部位を好む傾向にあるという。

柳生氏が言う。
「僕が頼むなら、茹でたゲソ。甘ダレを使う人が多いですが、オススメは塩レモン。
しょうが醤油もいいですね」

洋七師匠もこう言う。
「イカを食べるんやったら、ゲソ(足)やね。ただ、ゲソより耳。あの歯応えはたまりませんよ。せやから、僕は、耳があったら、他の部位は絶対食べへんね」

というわけで、イカ耳(ゆず塩)をいただく……
コリコリしているのに、腰が抜けるほど身が柔らか!

このイカ耳は、美味しいだけではない。
「イカは耳を使って空を飛びます。ヒレ(耳)を広げて揚力を生み出し、水面から飛び出すんです。捕食者からの逃避行動と考えられ、昨年、北海道大学が撮影に成功しています」(生物学者)

刺身に加えて、塩辛も美味だ。
「自家製の塩辛があってそれがきちんと美味しい店は、他の寿司ネタにも期待して大丈夫!」(柳生氏)

う~ん、たまらん!

回転寿司店の変化をつぶさに見てきた米川氏も、「イカを炙って出す店も増えてきました。寿司ネタとしてのイカの創作性が増し、ますます人気メニューになろうとしています」

ある店で見てみると、「真イカ」「イカ耳」「イカゲソ握り」「イカめんたい」「イカ納豆」と、イカだけで9種類ものメニューが存在する。

「イカゲソ揚げ」なんてのもある……

これもイカがしっかりしていて、味付けが絶妙!

生ビールとも合いそう!

続いて、サーモン。
「サーモンを食べない女、・子どもはいない、と言われるほど、今では回転寿司の看板ネタになっています」(柳生氏)

それもそのはず。
芸能界でも、「南明奈は大のサーモン好き。一度に10貫以上も食べるそう。他に、中川翔子、きゃりーぱみゅぱみゅ、元モーニング娘。の安倍なつみも、サーモンの握りが好物です」(夕刊紙記者)

芸能美女たちを想いつつ、ペロリと1貫食べます……

アッサリしててまろやかで最高!!
何個でも食える!

言うまでもないが、このサーモンと、朝定食に出てくるような鮭は別モノ。
「いわゆる一般的な鮭、つまり"シロザケ"ではなく、脂の乗った養殖のアトランティックサーモン、トラウトサーモンなどが好まれています。輸入品がメインです」(水産卸会社関係者)

1980年代、ノルウェーの「魚介類使節団」が日本に持ち込んだというサーモンの生食文化。
意外や長く食べられていなかったのには、こんな理由がある。

「天然の鮭は、アニサキスという寄生虫がいる可能性が高い。これは加熱、および冷凍で死滅しますが、それゆえ、生では食べられなかった。これを可能にしたのが、ノルウェーの養殖の技術。アニサキスの恐れがない海水の中で厳重に飼育管理されたサーモンが生まれ、生食文化が生まれたと言います」(前同)

そのうえ、流入したタイミングもよかった。
「1978年、回転寿司のベルトコンベアの特許が切れて、爆発的に全国に回転寿司が広まったのと相乗効果で、サーモンは日本列島に根づいていきました」(同)

サーモンは赤身魚ではなく…

加えて、巡り合わせの運も良かったという。
「まず、サーモンがマヨネーズと運命的な出会いをしたことが大きいんです。"サーモンマヨ"が生まれ、チーズを乗せた"サーモンチーズマヨ"とメニューがどんどん開発された。さらに、最近では、オニオンスライス、アボカドなどの食材ともコラボしています。サーモンは、いろんな組み合わせがしやすい素材なんですよね」(柳生氏)

ちなみに、今回の取材で食べた中で、一番衝撃的だったのは、「サーモン西京味噌炙り」。
これが、本当に100円で食える寿司かというくらい、高級感溢れるコクのあるお味!

素材の良さを生かしたサーモンの「中落ち軍艦」も素晴らしい。
とろみが強調されてウマかった~。

サーモンこそ、回転寿司文化の中で花開いた寿司ネタなのだ。

「サーモンの味噌汁もオススメです。東京の神保町にある『もりいち』で食べたものは、1杯140円で、お椀からサーモンの身がたっぷり溢れるほど具だくさん。先発・中継ぎ・抑えと、合計3杯もいただきましたが、その後、何度行っても出会えない。限定品だったみたいだけど、また、ぜひ食べてみたいです!」(前同)

赤身に見えるサーモンだが、実は白身魚。
独特の天然色素があるのだ。

サバ、イカ、サーモン、どれも素敵な「海の幸」。
お腹いっぱい食いてえ!

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