春から夏にかけて京都府の宇治川で大量発生する水生昆虫のトビケラに対し、宇治市は対策を強化することを発表した。

トビケラは幼虫時代を水中で過ごし、羽化の際は水面へ出て成虫になる。宇治市ではこの50年で生息数が3〜4倍に増えており、夜間は街灯など明かりに大挙して群がるため、観光客や住民から「気持ち悪い」という苦情が絶えなかったという。

このトビケラが増えた原因のひとつに、宇治川上流に天ヶ瀬ダムが作られたことが考えられている。ダム建設によって川の水量が安定して幼虫が巣を作る石が流れにくくなり、餌となるプランクトンもダム湖から豊富に流れてくるため、繁殖に適した環境に変わってしまったのだ。これに対し市では土砂を流して川底の石を動きやすくすることの他に、街灯の照明を蛍光灯からトビケラが集まらないLEDに変えることを検討しているが、その効果はすぐにあらわれるものではないと考えられている。そのため市は当面、従来の薬剤散布や殺虫器による成虫駆除を続けていく方針だ。

本来トビケラは水質が良好な川にしか住まない生物だ。大量に発生するのは、宇治川がそれだけキレイだということにもなる。また水中のプランクトンを食べるので、川の浄化にも役立っている。そもそも人間の都合で増えてしまっただけに、気持ち悪いと駆除してしまうのは、なんともすっきりしないものが残る。

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