うららかな5月の休日、鼻くそをほじりながらアホ面でテレビを見ていた私の元に編集スタッフから「都内で美人料理研究家が一風変わった料理教室を開く」との情報が入った。
会の趣旨や内容はさておき「美人」という言葉に編集者魂と股間が反応した私は一張羅を羽織り現場に急行。
ハァハァ息を荒げ、変態そのものの形相の私を優しい笑顔で迎え入れてくれた美人料理研究家とその参加者たち。
真剣に料理を学びにきている皆様とは違い、「美人とお近づきになりたい」という不純な動機でやってきた私は完全に浮いた存在に。
まずは、ごあいさつして、皆さんに可愛がってもらわなければ!
「はじめましてぇ、私、日刊大衆の編集長の……うげっ!」


閲覧注意!
写真はすべて衝撃的かつグロテスクな表現を含む画像です。
自己判断での閲覧をお願いします。
特にお食事中の方、心臓の弱い方はご覧にならないでください。
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おずおずと名刺を差し出した私の視界になにやら妙なものが!
「こ、こいつらはなんですか?」
「見ておわかりの通り、蚕の幼虫です。今日はこの『食材』を使って誰でも家庭で実現できる料理をお教えしようと思います」
こう答えたくれたのは主催者のムシモアゼルギリコさん。虫食いライターとして活躍する傍ら、昆虫食ポータルサイト『むしくい』(http://mushikui.net)を運営する美人料理研究家だ。まるまると太った蚕を手に何事もなかったように私に説明を続ける。
「この『食材』を使ってまずはフライドカイコを作ってみましょう」
フ、フライドカイコ!? ナンマンダブ、ナンマンダブ……。しかも食材ってアナタ! これ、フツーに幼虫ですよね!?
震えがとまらない私をよそに参加者たちも、
「ほほぉ、いい蚕ですなぁ」
「ほんとに美味しそう」
と顔をほころばす。

ジャーーーーーッ

油の中にいきなりの蚕投入!



ぱちぱち音をたてて弾けてまんがな!
私が腰を抜かしているうちにフライドカイコが完成。
ううう……、この雰囲気で試食しないわけにはいかないですよねぇ。
一匹掴んで目を閉じてパクリ。
ナムサン!

おっ!? あれれ? 思ったよりも美味しいぞ。うん、これはイケる!
昼時で腹が減った私は夢中になって珍味をほおばる。
ふと、気が付くと先生の姿が見えない……。
どちらにいらっしゃるのか……な、っと。
「おわっち!!」
次なる作業をしている先生を見つけた瞬間、情けない悲鳴を上げてしまった私。
そのオゾマシイ光景に脱糞寸前!
「なにをなされてるんですか!?」
「ええ、ゴキブリのワタを取り除いてるんですよ(微笑)」
ひーーーーーーーっ! オ、オタスケッッッ!



先生ったら、ゴキブリちゃんを食べやすくするため、手足をもいだり、内臓を取ったりしていらっしゃいます。

あわわわわわ。色即是空、色即是空……。神様仏様ッ!

完全に正気を失いかける私を無視し、先生は手際よく「ゴキブリの煮つけ」を調理中。
うまそうな匂いを振りまきながらグツグツ煮える害虫たち。完成が怖い!



嗚呼、そしてついにその時がやってきてしまいました。
試食です。ううう……。
後は野となれ山となれ!
パクーーーーーーッ



まともなものが食べられる立派な社会人になるようにとの両親の切なる願いのもと、大学まで進学させてもらった私。よもや、40歳を過ぎてから害虫を食する羽目になるとは……。
モシャモシャモシャ……

え!? アレッ! 海老だ。海老とおんなじ味じゃん!

う、うまい……。
なんと、これまで触ることすらできなかった「その虫」は海老にそっくりのお味じゃありませんか! 新しい扉が開く~。これならいつ飢饉が訪れても海老味だけは確保できそう。

そして、極めつけはタガメ酒! オスが発するフェロモンがなんと洋ナシの匂いにそっくり。とってもフルーティな味わいなのです。



今回のお料理教室、4時間のお勉強タイムはあっという間に過ぎてしまいました。とにもかくにも、いままで食わず嫌いだった自分を反省。
嗚呼、もう虫なしでは生きていけない。

合掌

ムシモアゼルギリコPROFILE
約5年前から昆虫料理研究会に参加し「虫食いライター」としての活動を始める。 現在、雑誌、TVほか各種メディアにて活躍中。 昆虫食ポータルサイト「むしくい」管理人。
むしくいURL■http://mushikui.net
2013年に『むしくいノート』を上梓。

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