6月にブラジルで開催されるワールドカップ(以下W杯)に向けて、日本代表がいよいよ動き始めた。

5月21日、鹿児島県指宿市で始まった合宿を手始めに、27日にキプロスとの壮行試合をこなしたあと、29日には直前合宿地の米国に向けて出発、6月2日にコスタリカ、6日にザンビアと強化試合で対戦した後、7日にブラジル入りする。

欧州リーグで活躍する選手で半数が占められ、"史上最強チーム"とも言われる今大会の日本代表。
前回大会の「ベスト16」を上回る成績に期待がかかっているが、ここにきてチームを空中分解させてしまいかねない大きな"火種"を抱えていることが判明した。

ザックジャパンの"最後のピース"としてサプライズ選出されたFW・大久保嘉人(よしと)(31)の存在である。

豊富な運動量とゴールセンスに優れ、昨年のJリーグ得点王に輝いた大久保のストライカーとしての能力は、サッカー関係者の誰もが認めるもの。
ただ、彼の起用には常に大きな不安がついて回るという。

「大久保は血の気が多い選手。簡単にキレやすく、これまで国際試合でも、大事な場面で退場を食らうシーンが多かった」(スポーツ紙サッカー担当デスク)

たとえば、2008年の南アW杯アジア3次予選のオマーン戦で相手を蹴って一発退場させられたシーンや、09年の天皇杯3回戦終了間際に相手選手と接触してレッドカードをもらったシーンは、いまだにサッカーファンの脳裏に強烈に焼きついている。

さらに、
「審判に暴言を吐いたりする例は枚挙にいとまがない」(前同)
というから、筋金入りだ。

01年のJリーグデビュー以来
「10年連続退場」
という不名誉な記録も持っている大久保。

この「キレぐせ」が問題視されて、これまでザックジャパンでの代表招集が見送られてきたという見方もあるほどだ。

とはいえ、大久保も今や31歳。
精神的にも成長したのか、以前のような"ヤンチャぶり"は、影を潜めている。

サッカー評論家の半田雄一氏が言う。
「大久保の反則は、カッとなって自爆する"子どもイエロー"でした。これは本人も自覚していて、大人になって反省しているようで、W杯の大事な場面では、もうやらないでしょう」

だが、たとえ彼が反則行為を自制しても、その"存在自体"が日本代表の"火種"になるという声がある。

「今の代表は、良くも悪くも"本田圭佑(けいすけ)(27)のチーム"。ザックはチームの司令塔たるトップ下のポジションを彼に任せ、本田はピッチ内の"指揮官"に君臨している。本田以上に司令塔の実力を持つ香川真司がサイドアタッカーのポジションに甘んじているのは、ザックの本田偏重采配の賜物(たまもの)ですよ」(前出・デスク)

つまり、今の日本代表は、王様・本田を中心とした微妙なパワーバランスの上に成り立っているということ。
大久保という異分子が入ることで、この"バランス"が崩れてしまう危険性があるというのだ。

「もちろん本田は、大久保の加入を快く思っていません。せっかくチームを意のままに動かせるようになったのに、突然、年長(本田は大久保の4歳下)のうるさい男が入ってきたわけですから。大久保が先輩風を吹かせて、あれこれ口出しするようなら、チームは崩壊しかねません」(前同)

もちろん「大人になった」大久保が「このチームは本田のチーム」と割り切って、本田を立てれば、大事には至らないかもしれない。しかし、そこは"Jの暴れん坊"の異名を取る御仁、代表に選出された直後のインタビューで、早くも本田に対する"宣戦布告"とも取れる発言をしている。

「言いたいことは言いたいね。何か思ったときに言わないで、あとになって後悔するのはダメ。よく黙ったままの人がいるけど、いちばんよくないよね。チームのためによくない。意見をぶつけ合うことは互いのためになるから」

"自分のチーム"に急に入ってきた"外様"からイチャモンをつけられたら、
「口から先に生まれた男」(協会関係者)
と陰で囁かれる本田が黙っているはずはない。


J軽視のザックが犯したミス

この2人、前回の南ア大会でもチームメイトだったが、実はそこで因縁が生まれていたと言う。
「南ア大会では、大久保は本田の"説教係"だったようです。本田のビッグマウスは知ってのとおり。本田が何か言って現場がピリッとしたら、すかさず大久保が睨みつけていましたからね」(前出・関係者)

両者がぶつかるのは、もはや時間の問題といえる。

一方、これまで心ならずも"本田独裁"を許してきた選手たちの中には、大久保の復帰を歓迎する向きもある。

15日の壮行会で、
「ヨシトさんが入ってうれしかった。必ずいい方向にいくと思う」
というコメントを出したのは、同じポジションを争うライバルとなるセレッソの元後輩・柿谷曜一朗。

大久保はその柿谷について、
「あいつはメンタルが弱い。周りの重圧を感じて結果が出せていない」
と発言している。

続けて、
「ワントップ争いは負けない」
と言ってのけたが、この発言の真意は自己をアピールするためではないというのだ。

「彼の発言は、明らかに楽しくプレーできない雰囲気を作っている本田に向けられたものです。大久保は、"テレビで見てても(香川)真司と曜一朗は楽しくなさそう"とも発言していますが、これなど明らかに、"かわいい後輩を萎縮させやがって。オレが入った限りは本田の好きにはさせない"という意味ですよ」(スポーツ紙デスク)

本田は、かつて日本の司令塔だった中田英寿になぞらえられることが多い。
唯我独尊で"孤高"を貫いた中田は当時、他の選手たちの間に大きな溝を作ってしまったとされる。

今回も、同じようなことが起こるのではないかと不安視する向きもあるのだ。
最悪なのは、大久保が選手たちの不満の"受け皿"となって本田と対立、チームが真っ二つになるというシナリオだ。

「確かに本田と中田はよく似ていますが、決定的に異なるのはコミュニケーション能力。本田は基本的に話好きで、他の選手たちともいろいろ話し合い、妥協点を見つけようとします。中田は何も言わずに自分のプレーについてこれる選手だけを"選別"する。本田は中田とは違いますよ」(協会関係者)

だが、現在の日本代表が「本田と心中するつもりで、ザッケローニ監督が作りあげたチーム」(スポーツ紙デスク)であることは確か。

"主張するFW"の大久保を入れるなら、最終選考でなく、もっと早く入れるべきだったという声もある。

「ザック自身は、大久保の経験や意外性、クオリティを評価したと言っていますが、実際は"Jの得点王をなぜ選ばないんだ"という世論に配慮したから。もうひとつはやはり、現在のFW陣にいまひとつ信頼できない部分があるからでしょう。ただ、大久保が川崎フロンターレで昨季、得点王になれたのは、中村憲剛というパートナーがいたからこそ。J軽視のザックは、それを知らない。本来なら、中村とセットで選出するべきですよ」(前同)

初戦のコートジボワール戦(6月15日)まで、3週間を切った。
ザッケローニ監督の大バクチは、吉と出るか凶と出るか!?

本日の新着記事を読む