5月27日、埼玉スタジアムで、ブラジルW杯に向かうサッカー日本代表とキプロス代表の親善試合が行われた。

6月15日に予選リーグ初戦を迎える「ザックジャパン」の国内最後の試合だったのだが、結果は1-0と辛勝。

ドイツでの公認S級ライセンスを持ち、世界のサッカーに精通する解説者の鈴木良平氏はこう言う。
「本戦で戦う相手より遥かに格下のキプロスに、1点しか取れない。これが日本の今の実力」
直前合宿での厳しい練習で選手に疲れが溜まっていたとはいえ、本戦での飛躍をまったく感じさせない試合内容。

ザッケローニがW杯メンバー発表会見で決意を語った、日本代表の"攻撃サッカー"は微塵も感じられなかった。

来るW杯、どうなるか。

前出の鈴木氏が続ける。
「今のままだと1つ勝つのも難しい。今の代表のサッカーで、W杯で結果を残すのは、夢みたいなことです」

サッカーファンは周知のように、ボールをキープし、パスを繋いでじっくりと相手を攻略するのが、今の日本代表の攻撃戦術だが、
「ACミランで戦力外のようになっている本田を筆頭に、"個"では崩せない日本が、そのサッカーを指向するのは間違いではありません。ただ、パスを繋ぐにしても、縦に縦にボールを入れていくスピードある繋ぎ方をしなくては」(前同)
と、課題あり。

そのうえ、
「世界の強豪でもボールを繋ぐ戦術だけで勝てるチームはほぼ皆無。粘り強い守備からのカウンターとの組み合わせ、両方揃って初めて戦えるものです」(同)

パズルのピースが足りない……このまま行けば、強豪イタリアやイングランドと当たる可能性があるベスト8を懸けた試合どころか、予選リーグ全敗もあり得る。

だが、「日本にはまだ大躍進の可能性が残っている」と本誌は断言したい。

その方法は、先日、アジアカップを初制覇したサッカー女子日本代表、なでしこジャパンに学ぶこと。

3年前にW杯王者に輝いたなでしこだが、アジア相手の今回も大苦戦した。
準決勝の中国戦では、延長後半のロスタイムでの決勝点。オーストラリアとの決勝では、体格で圧倒的に勝る相手の猛攻撃に耐え、1点を死守。
それでも勝ちきるのだ!

今年36歳になるチーム最年長の澤穂希は猛暑のベトナムで体力の限界まで走り回り、キャプテンの宮間あやは正確なプレーと指示でチームをまとめ上げた。

長年、なでしこを取材しているサッカーライターの上野直彦氏は、こう語る。
「男子代表が見習うべきは、その2人でしょう。澤は、"私の背中を見てプレーしなさい"と若手を鼓舞している。宮間は習志野高校時代に全国優勝した父の教えの"自分より仲間を優先しなさい"を実行しています」

日本代表の最年長・遠藤保仁が澤のように走り、チームの中心・本田圭佑が宮間の姿勢を取り入れればチームは激変するはずだ。

戦術面も見習いたい。

「なでしこは今、ショートカウンター攻撃を採用しています。中盤で相手を囲むときにはFWも加わり、ボールを奪った後はミドルパス一発でゴールを目指すという戦術。従来のパスサッカーにプラスして攻撃はより多彩になっています」(スポーツ紙記者)

なるほど。今、男子代表が手にすれば、"鬼に金棒"の秘策である。

前出の鈴木氏も、こう話す。
「なでしこの選手たちは、今も謙虚さを忘れていません。澤やベテラン選手は、選手が海外遠征の費用を自腹で負担するなどしていた恵まれない環境でサッカーを続けてきましたから」

ザックジャパンが、戦術面、サッカーへの姿勢をなでしこから学べば、ブラジルで大物食いを果たせよう。

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