仮に、梅雨子としておく。AVでは、もうギャルではなく若妻や人妻のジャンルに入れられてしまうけれど、義母ものを演じるにはまだ若すぎる、そんな年頃。

これまたAVでいえば、有名メーカーの単体モノや週刊大衆の巻頭グラビアを飾るにはちょっと苦しい。けれど、吊るされたり浣腸されたりといったハードな現場でしか使えない、なんてことはない。

企画単体モノならイケそうな、ごく普通に可愛い感じ。そんな梅雨子が、生まれて初めて金縛りに遭った、という話をしてくれた。
「今年一番の、暑い夜でした。誰かが乗っかってきましたが、そいつから悪意や怨念みたいなのは感じませんでした。姿ははっきりわからないのに、男だというのはわかったんです。首筋や頬にふれたそいつの髪の毛が、あきらかに男の髪の毛だった。その髪の毛の感触だけで、あっ、この人は知っている男だとわかった。誰、とはいえないの。本当にわからない。わからないけど知っている男」

その男との行為には、ひどく生々しいものがあった。なめられているときの舌の温度や感触だけでなく、つばの臭いも感じ取れた。

挿入されたときも、生身の男のものを入れられた圧迫感やはっきりとした快感もあった。彼女は前の彼氏と別れてから、一年以上男っ気はなかったという。
「欲求不満から、そんな夢を見たのかな、とも思いました」

金縛りは怖かったけれど、密かに待つようにもなった。何度か金縛りに遭って、見えない男とまじわった。いつも、気持ちよかった。

そして初めての夜から一カ月ほど過ぎた頃、夏川という男に再会した。
前から知っていたが、二人きりになるのは初めてだった。梅雨子はじんわりと、自分の中が湿っていくのを感じた。今の季節のように。

次週に続く



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