飼い主が死去したと知らず、9年間毎日、渋谷駅前で、その帰りを待ち続けた忠犬ハチ公。今、これに勝るとも劣らぬ「平成の忠犬」が話題になっている。
その主人公は、三重県松阪市の奥寺さん宅の14歳の柴犬・さくらだ。

6月5日の早朝に事件は起こった。
午前5時半頃、奥寺さんが異様な物音がする庭先に出てみると、さくらが飼われている17平方メートルほどのガレージに、全長1メートル(体重15キロ)、長さ10センチの角を2本持つシカを発見。

しかも、さくらが自身の倍はある、その怪物と決死のバトルを繰り広げていたのだ。

体格差はいかんともし難く、さくらは角で突かれ、投げ飛ばされたが、主人を守るべく奮闘。
シカの右耳を噛むなどして、その侵入を食い止めたという。

「ペットとして人気の柴犬の高い忠誠心は一般的に知られていますが、一方で、強い攻撃性を持っている犬種。そのため、かつては人間の狩猟に連れて行かれていました」(ブリーダー)

自身のみならず主人の身にも"危険がある"と判断すれば、その脅威に向かっていく勇敢さを持っているため、
「"このままでは主人が危ない"という本能が働いたのかもしれません」(前同)

すでに瀕死の瀬戸際にあったさくらを奥寺さんが救出し、病院に搬送。
一方で松阪署に通報した。

「警察は7時頃に到着しましたが、シカは農林水産課ということで、すぐにそちらに電話。しかし、職員が確認したところ、ただのシカではなく、天然記念物のニホンカモシカだった。そこで文化課に連絡が入り、9時20分頃、ウチの職員2人が現場に向かいました」(松阪市教育委員会文化課)

さらに、生きたまま山に返すべく、協力を仰いだ猟友会や獣医が集合したのが午後3時だった。

「天然記念物に万が一のことがあったらいけません。獣医さんにかなり薄めた麻酔を作ってもらい、それを猟友会の方にカモシカに撃ってもらいました。ほぼ起きている状態でしたので、足をヒモで縛って山に返しました」(前同)

気になるさくらの安否だが、38針縫うなどの懸命の治療も空しく、天に召されたという。
最期まで主人を守り、己を捨てて戦った忠犬・さくら。
その冥福を祈りたい。

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