日本のエースから、メジャーのスーパースターへ。今年でメジャー3年目を迎えたレンジャーズのダルビッシュ有(27)と、ヤンキースで鮮烈なデビューシーズンを飾っている田中将大(25)の活躍が止まらない。

「ダルビッシュは今季、ここまで7勝4敗(6月25日時点=以下同)。早くも奪三振数は100を超えるハイペースです。一方の田中は11勝2敗。チームの勝ち頭であると同時に、ア・リーグのハーラーダービーでもトップ。防御率も2・11でリーグ1位と、文句のつけようがない成績です」(スポーツ紙メジャー担当記者)

このままいけば、この2人が、メジャーで最も活躍した投手に贈られるサイ・ヤング賞の日本人初受賞を争うのも夢ではない。

そんな偉大な先輩に続けとばかりに気を吐いているのが、北海道日本ハムの大谷翔平(19)と、東北楽天のりもとたかひろの則本昂大(23)だ。

ともにプロ2年目。投打の"二刀流"に挑戦している大谷は、ダルビッシュがつけていた背番号11の後継者でもある。

「大谷は現在、チームトップの7勝を挙げるなど、誰もが認めるローテーション投手に成長しました。打者としても打率・282、2本塁打、15打点と、"合格点"の数字を残しているのだから、たいしたものです」(スポーツ紙デスク)

大谷の二刀流には賛否両論があるが、今は結果を出すことで"雑音"を封じ込めている格好だ。

一方、今季の則本はここまで8勝4敗。交流戦では4完封し、ダルビッシュの3完封を上回る交流戦新記録を樹立。田中の抜けた楽天を支える若きエースとして活躍中だ。

「昨年の則本は15勝8敗、防御率3・34の堂々たる成績で、パ・リーグの新人王を獲得。開幕から24連勝した田中とともに楽天の日本一の原動力になりました。星野監督も"田中の力が大きかったことは言うまでもないが、則本がいなかったら、楽天の優勝もマー君の24連勝もなかっただろうな"と述懐しているほどです」(楽天担当記者)

大谷と則本がポスト・ダル、ポスト・マー君の最有力候補であることは衆目の一致するところだ。

「大谷のストレートの平均球速は151キロで、12球団の先発投手で1位。さらに、160キロのストレートをコンスタントに投げることもできる。彼の直球は速いだけでなく、重いのも特長。ブルペン捕手が"捕球時に気を抜くと、ケガをしそうで怖い"とビビるほどの球なんです」(球界関係者)

これに対して、則本の直球はキレの良さが身上。

「則本のストレートは最速153キロ、平均144キロですが、打者の手元で浮かび上がるようにホップするんです。そこでひと伸びするため、打者の体感速度はスピードガン表示以上のものがある。則本も"速いストレートより、打たれないストレートを求めています"と話しています」(前同)

変化球に関しては、大谷は、スライダー、フォーク、カーブ、カットボールを投げ分ける器用さがある。則本も変化球はスライダー、フォークを投げるが、「則本と言えば、直球とフォークのイメージが強かったんですが、今年はチェンジアップを有効に使っている。そのためピッチングの幅が広がりましたね」(民放スポーツ局ディレクター)

ダルビッシュ、田中、大谷の3人には"甲子園のスター"という共通点があるが、滋賀・八幡商出身の則本は甲子園とは無縁。

大学も昨年閉校した三重中京大で、決して野球のエリートコースを歩んできたわけではない。

「三重中京大4年時に全日本大学野球選手権に出場した則本は、1回戦で延長戦の末、大阪体育大学に敗れたものの、三振20個を奪う快投を見せ、ようやく全国区の投手になったんです」(野球専門誌記者)

その辺りは、ダルやマー君よりも巨人からレッドソックスに移籍した"雑草魂"上原浩治に似ていると言えよう。常に打者と真っ向勝負する則本の負けん気の強さは、彼の野球人生によって育まれたものだろう。

一方、大谷は岩手・花巻東高のエースとして、春夏合わせて2回、甲子園に出場。3年夏の岩手県大会決勝では、アマ最速となる160キロのストレートを記録して話題になった。

2012年のドラフト会議前には、複数のメジャー球団スカウトが大谷を視察。早くからメジャー志望を明らかにしていた大谷を、日本ハムだけが強行指名し、なんとか入団にこぎつけたのは記憶に新しい。

「当時の大谷は投手としてはもちろん、野手としての評価も非常に高かった。ソフトバンクの王貞治会長も"日本人で僕のホームラン記録を破れる素質がある"と親しい人に語ったほどです」(スポーツ紙記者)

大谷本人の意志と日ハムの営業方針もあって、ここまで二刀流を続けてきたが、

「大谷も日ハムも、将来のメジャー移籍を視野に入れていることは確か。メジャーでは投手としての評価が高いので、いずれ投手一本に絞らざるをえない時期が来るはず」(球界関係者)

という見方が一般的だ。


"侍JAPAN"のエースに!

野球評論家の橋本清氏は則本と大谷を比較して、次のように話す。

「則本は体は大きくないですが、下半身の力を指先に伝えることができているのがすばらしい。だからボールに力があるんです。なにより、あの投げっぷりがいいですよ。まさに魂の投球。彼ぐらい打者から逃げずに勝負する投手は最近では珍しい。しかも決して力任せではなく、投球自体はクレバーですからね」

さらに続けて、

「則本にとって、昨シーズン、田中と野球ができたことは大変な財産になっているはずです。負けない投球をするためにどうすればいいか、ピンチのときにギアをどう入れ替えるのか、これ以上ないお手本が目の前にいたわけですからね」

一方、大谷については、

「身体能力に優れた野球選手は他にもいますが、彼くらい背が高いのに体が柔軟で、バランスのいい肉体を持っている選手は、ちょっと見当たりませんね。なんといっても160キロのストレートは魅力。いくら球が速くてもプロの打者なら対応できると言いますが、160キロは別次元。打者は差し込まれないようにストレートに合わせてくるので、変化球はしょぼくても打ち取れるんです」

それだけに、

「今後、ダルビッシュのように変化球の精度が上がったら、大谷はどれほどすごい投手になることか……」

むろん、今の大谷と則本ではダルビッシュと田中とは格が違うだろう。だが、将来的に肩を並べる可能性がないわけではない。

ちなみにプロ2年目(06年)のダルビッシュは12勝5敗、防御率2・89と大ブレイク。田中の2年目(08年)は9勝7敗、防御率3・49と、11勝を挙げて新人王に輝いた前年から一歩後退している。

はたして大谷と則本は、ダルとマー君の2年目の成績に、どこまで近づけるか。

いずれにせよ、17年に行われる第4回WBCで、2人が"侍JAPAN"のエースとして君臨していることは間違いないだろう。

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