安倍首相が仕掛ける”自民党長老討伐”「永田町妖怪大戦争」最終決戦の画像
安倍首相が仕掛ける”自民党長老討伐”「永田町妖怪大戦争」最終決戦の画像

7月1日、余裕の笑みを浮かべ、集団的自衛権の行使容認を決める臨時閣議に臨んだ安倍晋三首相。
従来の憲法解釈を変更、具体的な有事法制の整備に向けて各種調整、準備が始まった。

「集団的自衛権を巡っては、与野党ともスッタモンダがありました。ただ、いくら野党が憲法解釈変更に反対してみたところで、全国紙の世論調査を見れば、全野党あわせても支持率が2割に満たない状況。何も手が出せないのが現状ですよ」(永田町関係者)

自民党と連立を組む公明党も、支持母体である創価学会婦人部を中心に反対の声が上がったが、
「山口(那津男)代表も基本的に反対の立場でした。ただ、執行部が官邸サイドから連立解消の脅しをかけられたら、党本部としても容認せざるを得ない。痛恨だが、結局、腰砕けで終わってしまった……」(公明党・地方本部関係者)

これでは、安倍首相が余裕の笑みを浮かべるのも、無理はない。
野党と公明党に完勝した安倍首相は、もはや向かうところ敵なし。

――と思いきや、現実は、さにあらず。
かの戦国武将・織田信長が、天下統一を目前に、"獅子身中の虫"たる明智光秀に本能寺で討たれたごとく、政界も一寸先は闇。"真の敵は身内にあり!!"とばかりに、安倍首相が警戒を厳にする集団があるという。

「"永田町の妖怪"と呼ばれる長老たちですよ。自民党の"隠し砦"とでも言うべき砂防(さぼう)会館に巣食う面々です」(官邸筋)

砂防会館は、国会議事堂近くの千代田区平河町2丁目にあるテナントビルのこと。
そこに本部を構える全国治水砂防協会が管理しているため、その名がついた。

「かつて田中角栄・元首相(故人)や旧田中派が事務所を構え、"政治は砂防会館で作られる"とまで言われていました。いま、その砂防会館が"反安倍の牙城"となり、元議員の長老たちが暗躍しているんです」(全国紙自民党担当記者)

まさに"隠し砦"そのもの。
その隠し砦には"三悪人"が巣食うという。
古賀誠・元自民党幹事長、青木幹雄・元自民党参議院会長、森喜朗・元首相の面々だ。

「筆頭が古賀さん。名門派閥の岸田派(宏池会)の名誉会長を務めており、いまでも派閥の会合へ頻繁に顔を出し、"宏池会を主軸とする保守本流の政権を作る"と気炎を上げています。古賀さんは安倍政権打倒を公言して憚(はばか)らない、反安倍の急先鋒です」(前同)

なにしろ、この御仁、安倍首相が憲法96条の改正を持ち出せば、派閥議員に呼びかけ、わざわざ映画『リンカーン』の鑑賞会を開いてみせたほど。

「リンカーン大統領は、奴隷解放のために憲法改正をめざし、議員の説得に悪戦苦闘します。それに引き換え、安倍政権は議論を尽くさず、憲法改正を断行しようとしていると言わんばかりの上映会でした」(同)
最近では、リベラルを自認し、集団的自衛権反対の立場から、安倍政権を揺さぶっているという。

「古賀さんは岸田文雄外相らを囲んだ会食にも積極的に参加し、派閥の結束を固めています。あの人は、全身から"安倍憎し"が溢れている」(自民党関係者)

その古賀氏の事務所の1つ下の階に入居するのが青木氏。
「言わずと知れた元自民党"参院のドン"。いまでも出身派閥である額賀派(平成研)や、自民党参院に隠然たる力を持っています。古賀氏同様、すでに議員を引退していますが、周囲に"安倍政権打倒を最後の仕事にしたい"と洩らしているほどの安倍嫌いです」(前同)

もう一人は、安倍首相と同じ町村派(清和会)出身の森元首相。
「2007年の参院選で自民党が大敗した際、首相だった安倍さん(第1次安倍政権)は、電話で森さんに続投の意思を伝えました。しかし、森さんは責任を取って辞めるべきだと返したんです。この一件以来、同じ派閥とはいえ、両者の関係は微妙になったと言います」(町村派関係者)

森元首相は古賀氏と同じフロアに事務所を持つが、現在引っ越しの準備中。
新橋と虎の門を結ぶ新道路、通称"マッカーサー通り"近くのビルを新事務所に予定しているという。

「森さんは砂防会館を出ますが、古賀、青木両氏とは腐れ縁。情報交換は続けていくはずです」(前同)


長老と石破幹事長の怪しい仲

そもそも、この3人は、一昨年9月の自民党総裁選で、当時幹事長だった石原伸晃環境大臣を担ぎ、安倍政権誕生を阻止しようとした間柄。その結びつきは強固だとか。

この"砂防会館の三悪人"以外にも、虎視眈々と安倍首相の首を狙っている長老たちがいる。

その代表が、野中広務・元幹事長。
「野中氏は、安倍政権はいったん尖閣諸島の問題を棚上げし、中国との友好関係を築くべきだと主張。テレビ番組などに出演して、反安倍の狼煙(のろし)を上げ続けています。さらに、野中氏は沖縄に影響力を持っています。かつて民主党の鳩山(由紀夫)政権が沖縄問題でコケたように、沖縄で安倍首相をつまずかせようと図っているようです」(前出・記者)

この野中氏に先の古賀氏、さらには加藤紘一氏の"自民党元幹事長トリオ"は、日本共産党の機関紙『赤旗』に登場し、"安倍降ろし"をブチ上げてみせたほどのアンチ安倍。

かつての自民党の大物が共産党の機関紙に出張るなど、誰が予想しただろうか。
その手段を選ばぬ姿は"妖怪"そのもの。

妖怪といえば、この人こそ本物の"物(もの)の怪(け)"かもしれない。
96歳になって、
「ますます元気で意気軒昂」(前出・自民党関係者)
とされる"大勲位"中曽根康弘・元首相だ。

「中曽根さんはタカ派で知られ、安倍首相とは意見が一致していると思われがち。ところが、海軍将校として戦争を体験した中曽根さんは、安倍首相のやり方が気に入らないようです。5月の誕生パーティに安倍首相を呼びつけ、影響力を誇示していましたからね」(前同)

このほか、先の都知事選で「反原発」を掲げ、細川護煕・元首相を推した小泉純一郎・元首相も、安倍政権の"目の上のタンコブ"になっているという。

「安倍首相にとって"真の抵抗勢力"が、こうした長老たちであることは間違いありません。ただ、長老は長老。現場への影響力は年々薄まっていく。安倍政権が長期に及べば、自然消滅するはずです。それが、長老派にとって"救いの神"が現れたんです」(同)

誰あろう、石破茂幹事長だという。
「石破氏は、一昨年の総裁選で地方の党員票で断然優位に立っていたものの、森、青木両氏といった長老に嫌われ、安倍首相に逆転勝利を許しました。そこでまずこの5月、石破氏は青木氏と密かに会い、これまでの非礼を詫びたそうです。その狙いはもちろん、来秋の総裁選で長老の支持を取りつけるためです」(前出・永田町関係者)

この石破氏、森元首相への挨拶もぬかりなく済ませているという。
つまり、安倍政権を支えるべき与党最高幹部でありながら、石茂氏は、こっそり反安倍派の牙城に足を運んでいるというのだ。

4月には岸田派のパーティに出席。
そこで、
「岸田(文雄)さんはハトに見え、石破はタカに見えるなんて、人を見た目で判断してはいけない。鳥類図鑑ではないんだから。先の大戦はなぜ起きて、なぜ敗れて、なぜ無辜(むこ)の人々が大勢亡くなったのかを、古賀(誠)先生はじめ、宏池会のみなさんにご教授いただいている」と歯の浮くような"ヨイショ"をしてみせた石破氏。

"安倍の次"をうかがうべく、長老とタッグを組んだことは間違いないようだ。


最終決戦は秋の臨時国会か!?

現職の党幹事長というカードを得た長老陣営。
これら自民党長老派らの動きについて、政治評論家の浅川博忠氏は、こう指摘する。
「集団的自衛権の閣議決定で、リベラル派と呼ばれる議員が安倍さんにどれだけ反発するか。この数が多いと、安倍政権は不安定になります。それより重要なのが"第二波"です。9月に予定される内閣改造人事の結果次第では、党内の反安倍勢力と長老たちの連携が加速する可能性は十分にあります」

本誌既報のとおり、1年半以上にわたり、内閣改造が行われてこなかったため、当選3~5回の議員には
「いつ俺は入閣できるんだ」という不満が鬱積(うっせき)。
そのガス抜きが内閣改造の目的とされる。

ところが、
「自民党には初入閣を期待する議員が衆院で43人、参院で16人もいます。内閣改造でガス抜きをしても、当然、全員の要求に応えられず、必ず不満分子が出てきます」(前同)

たとえば、古賀氏が名誉会長を務める岸田派に、青木氏が影響力を持つ額賀派が合流すると、数の上で安倍首相の出身派閥である町村派を上回る。
改造人事が失敗すれば、安倍首相に弓引く勢力が、ここぞとばかりに決起するはずだ。

では、安倍首相はどうやって、その元凶になる"妖怪退治"を行うつもりなのか……。
「首相はまず、(同じ派閥の)森元首相を取り込み、彼に火消し役を務めさせる考えでしょう」(同)

森氏は東京五輪組織委員会会長に就いているが、
「これは、政局への口出しを封じるための措置」(前出・党関係者)
と言われている。

「森さんは組織委員会の活動に専念するため、五輪の中心地となるお台場近くに引っ越す。それが砂防会館を出た理由です。結果としては、"三悪人"の一人を追い払えるわけで、安倍首相の思惑どおりになっています」(前同)

さらに、安倍首相は"軍師役"の菅義偉官房長官を密かに"隠し砦"へ派遣。
「菅さんは定期的に"砂防会館詣で"を行い、青木氏の懐柔を行っている」(前同)

調略と懐柔――
まさに戦国武将流の手法で"妖怪退治"に乗り出した安倍首相。

反安倍の急先鋒である古賀氏についても、
「岸田派のパーティに出席した首相は、"(今日は)久しぶりに古賀名誉会長にお目にかかりましたが、よろしくお願いしたい"と挨拶しており、表面上はリスペクトの姿勢。ただ、そのときの首相の目は、決して笑っていませんでしたがね」(パーティ出席者)

森元首相を追い払い、青木、古賀両氏にはのらりくらり。
「古賀さんが"落城"してしまえば、ほかの長老たちは沈黙せざるをえません。野中さんは外野でただ吼(ほ)えているだけだし、中曽根さんは元気だといっても年が年。小泉さんも、息子の進次郎代議士を党内で"人質"に取られている立場ですから。もはや、妖怪たちの出る幕はありませんよ」(前出・官邸筋)

ただ、一筋縄でいかないところが、妖怪の妖怪たる所以(ゆえん)――。

政治評論家の本澤一郎氏が、こう語る。
「内閣改造人事のあとに開かれる秋の臨時国会。これが安倍政権にとって正念場となるでしょう。集団的自衛権の容認を閣議決定しても、自衛隊法などを改正しなくては、実際に行使できません。改造人事の不満が渦巻き、重要法案が山積する臨時国会をどう乗り切るのかが注目されます」

妖怪たちにも、十分に反撃のチャンスがあるのだ。

"秋の陣(臨時国会)"での完勝をめざし、この夏、本格的な妖怪大戦争が始まる――。

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