先手必勝、一撃必沈の対潜戦

海自および米軍は、こうした中国潜水艦の動向を逐一、捕捉しているという。
「中国の原潜はとにかく音がデカい(笑)。静粛(せいしゅく)性(静けさ)が命の潜水艦にあって、ドラを叩きながら水中を進むようなものですよ。自分が伊豆大島沖で訓練中に、中国の漢(ハン)型原潜が四国沖の海中を猛スピードで航行しているのを発見できたくらいですからね」(前同)

潜水艦の位置を特定するには、スクリューやエンジンの雑音を用いる。
海自は艦種ごとに異なる雑音のデータ(「音紋(おんもん)」という)を日夜収集しているという。

「潜水艦からも音紋データは収集できますが、空には、P-3C哨戒機やSH- 60K哨戒ヘリという頼もしい援軍がいます。敵艦が海中に息を殺して潜もうと、空から音波を収集するソノブイを海中に投下、さらには磁気測定機を用いて即座に居場所を特定します。海自の対潜哨戒能力は世界一とされていますから、中国の潜水艦は生きた心地がしないでしょうね」(専門誌記者)

対潜戦は、日々の情報収集がカギとなる。
「自衛隊の潜水艦部隊は、2週間から、最大3か月程度の演習を繰り返します。演習とはいえ、重要な水上航路に潜み、絶えず情報収集を行っているんです。潜水艦の"ホットスポット"は、冷戦時代だとソ連太平洋艦隊の潜水艦や水上艦艇が通過する宗谷、津軽、対馬海峡。現在だと、中国対策で豊後水道や浦賀水道に目を光らせなければなりません」(前出・元自衛官)

海自の潜水艦基地は横須賀(神奈川)と呉(広島)の2か所。
前出のエリアに加え、海上輸送路の安全確保のため、
「作戦海域は東シナ海全域、台湾海峡、フィリピン沖のバシー海峡」(前同)
というから凄まじい。

「各国潜水艦が最も激しく蠢動(しゅんどう)しているのは、水深200メートル前後だと言います。対潜戦は先手必勝、一撃必沈が大原則。海中で息を潜め、敵艦の動きを察知し、先に魚雷を打ち込むことが唯一の勝機です」(同)

中国のキロ型や商型は、海自の誇る「そうりゅう」型に肉薄する能力を持つとされるが、
「航空機による対潜哨戒能力は中国軍のはるかに上。潜水艦の数は少ないですが、負ける気はしませんよ」(同)
と手応えあり。

米豪軍との連携も進み、
「日米は近年、対潜空爆を想定した訓練に力を入れています。これは中国への大きな牽制(けんせい)になるはずです」(前出・古是氏)

我々の知らない海中では、日中両国の"鉄鯨(てつげい)"が絶えず睨み合っている。

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