国内で現存する最古のものと見られるそろばんが、大阪市の老舗メーカー「雲州堂」にあることが分かった。

「これは中国式の“二-五珠(たま)”で、珍しい20桁の両面製。銀製の片面には重さの単位“貫”“匁(もんめ)”、反対面には米の単位となる“石”“斗”“升”などの単位が記されているようですね。枠には高級木材の紫檀(したん)が使われ、銀製金具が施されており、錠前付きの二重木箱に収納されています」(骨董に精通したライター)

16世紀末、豊臣秀吉の軍師・黒田官兵衛の側近であった久野重勝(1545~1592)が、秀吉から授かったものとされ、豪華で保存状態も良好だ。

雲州堂の先代社長が戦後間もないころに入手したが、製造年代などは不明で、これまで詳しいことは分からないままだった。手がかりは、木箱に墨書された「四兵衛重勝拝領算盤」の文字。

雲州堂の現社長・日野和輝氏は、「四兵衛重勝」とは黒田官兵衛の精鋭家臣「黒田二十四騎」の「久野四兵衛重勝」ではないかと推察。黒田二十四騎展を開催していた福岡市博物館に問い合わせたところ、黒田家や久野家に関係する2通の古文書が発見された。

そこには、豊臣秀吉の九州平定(1587年)~朝鮮半島派兵(1592年 文禄の役)の間ごろ、築城や都市設計で見事な貢献をした久野重勝に、秀吉が褒美として銀の金具を使った唐木製そろばんを授けたとあり、その特徴が合致した。

そろばんは、歴史的には16世紀後半に中国から伝わったとされ、これまでは前田利家が文禄の役で使用していたものが国内に現存する最古のものとされてきたが、今回の発見でこれが更新されることになる。こうした新たな発見で、大河ドラマ「軍師官兵衛」を観るのも一味違った楽しみとなりそうだ。

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