すぐに調べてみると、確かに平成20年の4月にその事件は起きていた。当時、被害者の衣服は見つかったものの、遺体は発見されず、少女の行方はいまだ不明だ。
きな臭い話ではあったが、少なくともこれで現地への行き方は判明した。ようやく取材班は、いくつかの手がかりを元に「しんせいきょう」へ向かうことになった。国道411号線、深い山道を延々と登る。大小さまざまなトンネルを抜けて1時間強、現地に近づくと、まだ日は明るいというのに急激に気温が下がってきた。
それから間もなくすると、先の男性から聞いた通り、「柳沢峠」と書かれた看板を発見した。取材班はすぐ横の茶屋に車を停め、店内で話を伺うことにした。
薄暗い店内にはほとんど品物が置かれていないうえ奥の食堂にも客の姿もなく、男性がレジのカウンターに1人いるだけだった。その男性に聞いてみると、その場所は簡単にわかった。
「しんせいきょうはすぐそこにあって、別荘があるんだよ」
別荘という言葉に疑問を持ち、レジャーランドではないかと尋ねたが、彼は別荘だと言い張った。
「現在は誰のものでどんな状況なのかは、まったくわからない。数年前に火事があり、建物は全焼してしまって跡形もない」
さらに行方不明の少女のことを聞いてみると、
「聞いたことはあるが、よくわからない」
という返事が返ってきた。まるでそういうことには関わりたくない、と言わんばかりのぶっきらぼうな口調だった。
少女の殺害場所を否定したうえ、別荘と言い張るところなど、甲府市役所の男性と食い違いが多く見られる。なにか腑に落ちない思いを抱きながら、私たちは茶屋を出て、裏手にあった公衆トイレに入った。
するとその壁に、覚醒剤を打たれ行方不明となった少女の写真があったのだ。
赤地に白い文字で大きく「この人を探しています! 所在不明」と書かれ、その下には当時19歳だった少女の写真と名前、当日着ていた衣服の特徴などが記されていた。
やはりあの時、役所の男性が語った話は本当だったのだろうか? また茶屋の男性が知らないと言い張ったのは、どういうことなのだろうか?
するとその時、公衆トイレの近くの山道から、老人が歩いてくるのが見えた。私たちはその老人に疑問をぶつけてみることした。


その1 8月23日公開

その2 8月24日公開

その3 8月25日公開

その4 8月26日公開予定

その5 8月27日公開予定

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