老人の話によると、確かに少女の行方不明事件はこの辺りで起こったという。また彼が歩いてきた山道を登れば「しんせいきょう」へ行けることも教えてくれた。しかし今から山道を登れば、確実に日は沈んでしまう。私たちは「しんせいきょう」を車道側から目指すことにした。
柳沢峠の茶屋を超えると、青字に白い文字で「深静峡」と書かれた看板があらわれた。ついに辿り着いたのだ。錆びついた看板には、キャンプ場、ロッジ、食堂、宿泊施設と書かれていて、林道の方へ矢印が書かれていた。
しかしこんな山奥深くにレジャーランドを建設して、いったい誰が来るというのだろうか。また茶屋の男性がいった別荘とは、どういう意味なのだろうか?
林道には立入禁止の立て看板が、道を塞ぐように置かれている。「通行止め」と書かれた下には、不審者の目撃情報の連絡先として捜査本部の電話番号が書かれ、少女の写真が貼られていた。しかしその立て看板は二車線道路の片側に置かれているだけで、もう片側は車一台ぶん通れるようになっている。このまま進むことは可能と判断し、車のエンジンをかけた。
しばらく進むと落石があったり、ひび割れていたりと路面状況が悪くなってきた。そしてさらに10分ほど進むと、急に開けた場所に出た。眺めのよい高台のようなそこは、テニスコート2面ぶんほどの土地だった。車のエンジンを止めると辺りは静寂に包まれ、時折り、木々が揺れる音だけが響いている。周りを囲んだフェンスの奥には、木造の建物のようなものがあったが、なにかに押しつぶされたように柱が折れ、屋根が地面にそのまま置いてあるかのようだった。
そこで数十分ほど辺りを捜索したが、これといった情報も見つからない。さらに日が落ちて次第に薄暗くなってきたこともあり、取材班はここをあとにして、横にある山道を登って行くことにした。


その1 8月23日公開

その2 8月24日公開

その3 8月25日公開

その4 8月26日公開

その5 8月27日公開予定

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