いいとこどりの「夢のマグロ」

実際に本誌記者がそれを食してみると、天然モノよりスジが少なく、舌触りが劇的に滑らか。しかも、天然とは段違いの甘みが口いっぱいに広がった。

これは、天然モノに引けを取らない!

この旨味に加えて、さらにうれしいのが安全性。

卵から成魚まで完全管理されており、出荷される近大マグロにはアーマリン近大が「卒業証書」を発行している。最近、巷をにぎわせている"食の危険"の心配もないのだ。

「もともとマグロは水銀含有率が他の魚よりも多い。それも体重と比例して多くなりますが、完全養殖モノは、天然よりも水銀含有率が低い結果が出ています。また、"卒業証書"にはそのマグロの養殖の履歴や飼育記録を知ることができるバーコードも記載されています」(ビジネス誌記者)

まさに、"いいとこどり"の「夢のマグロ」が実現したと言えるが、

「ここに来るまでは苦労の連続でした。初年度は、孵化して稚魚になる間に半数が死んだり、養殖場に移して幼魚に育てる間にも、いけすの網にぶつかって死んだりと、ほとんど出荷できませんでした。その後、技術改良が進み、人工のエサ(配合飼料)も工夫して、昨年、2万5000尾の生育に成功しました」(近大関係者)

しかし、それでも国内消費量の1%にも満たない。そこで、近大と提携関係にある豊田通商が、長崎県五島市に、稚魚を育てる施設を来年初頭に稼働させるのをはじめ、来年秋に沖縄県名護市に養殖場を新設する「大増産計画」に乗り出すことになった。

計画が順調に進めば、稼働から5年後には30万尾の生産を予定しているというから、期待は十分。

「完全養殖マグロは、技術的困難を克服した今、養殖の場をもっと拡充できれば、供給量を増やせます。しかも、天然に比べてトロの比率が高いため、希少さゆえの高値も解決。将来的には、安全で激ウマのクロマグロが、今では考えられない破格値で購入でき、毎日、大トロを食べるなんてことも夢じゃなくなるかもしれません」(前出・ビジネス誌記者)

"黒いダイヤ"が存分に味わえる日が、今から楽しみだ!

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