先日、今年上半期に中国から日本を訪れた観光客が88%も増えたのに、日本から中国へ行く旅行者が今も減り続けている、とこのコラムで書いた。その理由の1つはPM2・5に象徴される中国の深刻な環境汚染だと指摘したが、ほかにも理由がある。治安問題だ。

先月中旬、広州市の大通りで突然路線バスが爆発し、2人が死亡した。実は中国の路線バスでは最近、こういった「テロ」が続発している。南部のアモイで昨年、高速バスから突然出火・爆発し、約50人が死んだ大惨事を覚えている人も多いだろう。

広州事件の原因はまだ不明だが、アモイのケースは60年代の文化大革命で農村に追いやられ、その後極貧状態が続いて政府に陳情を繰り返していた男が、自暴自棄になって犯行に及んだことが分かっている。中国では、チベットやウイグルなど少数民族のテロがニュースになっているが、実は漢族のこういった「テロ」もじわじわ増え続けている。

北京や上海など、中国の大都市は最近実に物々しい。街角には、機関銃を持った武装警官が立ち並び、自動車のナンバーと運転者を識別するカメラ(日本のNシステムと同じだ)が幹線道路という幹線道路に設置され、パシャパシャと遠慮なくフラッシュをたいてくる。

中国は世界第2位の経済大国になったが、現在の治安状況は1949年の建国以来最悪だ。急成長を続けてきた経済にも陰りが見え始めたから、今後自分の境遇に不満を持った人々が増えることはあっても、減ることはない。「テロ」も残念ながら、しばらく増え続けるだろう。

日本人が中国でバス爆発に巻き込まれる……というニュースが、近い将来現実になるかもしれない。そうならないよう、切に願いたい。


本日の新着記事を読む