江戸城七不思議 その六
将軍が見た「宇治の間」の霊

嘉永6年(1853)、12代将軍家慶(いえよし)は大奥の宇治の間近くの廊下を進んでいたところ、敷居に両手をついた黒紋付姿の老女を見た。家慶は誰かと供の奥女中にたずねたが、他のものにはその姿は見えずに皆は恐怖に震えあがった。そのときは将軍に対して誰もいないとは言えず、適当に返答したが、またその数日後も宇治の間近くで家慶は歩を緩め「今日は泣いていた」と言ったという。大奥ではその亡霊は150年前の、5代将軍綱吉の正室・信子に仕えた御年寄だと伝えられていた。一説には、信子がその御年寄に手伝わせて綱吉を宇治の間で殺害。その数日後に自害したとも言い伝えられている。

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