近未来のスター選手たちがしのぎを削る夏の風物詩。後世に語り継がれる若人の巧みな技をプレイバック!

夏の甲子園は、まさに「将来のスター選手」の見本市。各球団のスカウトたちは第2の大谷翔平(日ハム)を発掘するべく、ネット裏からグラウンドに熱視線を送り続けている。

しかし、今年の「ドラフトの目玉」ともいうべき高校球児たちは、夏の甲子園へ出場を果たせなかった。

その怪物の一人は、済美の安楽智大投手。1年生の秋からエースの座に君臨し、MAX157キロのストレートを武器に昨年の選抜準優勝を果たした。米メディアにも取り上げられたほどの逸材だが、肘の故障で夏の甲子園出場は叶わなかった。

「夏の県大会で登板し、140キロ台のストレートを投げてはいたものの、2年生時にガンガン投げ込んでいた150キロ台の剛球はなりを潜めていました。"怪物"と言うには、ほど遠かったですね」(地元紙記者)

実際問題として、ケガはどれほど深刻なものなのか。それを見極めるのが、スカウトたちの至上命題となっているという。

「済美の上甲正典監督が安楽を酷使し続けていることに、スカウト陣はハラハラしていますね。愛媛大会の直前にダブルヘッダーの練習試合が組まれたんですが、第1試合に完投させた安楽を2試合目にリリーフ登板させるような采配。スカウト側からは"逸材を潰すつもりか"と怒りの声が上がっています」(前同)

いずれにしても、ドラフト本番までスカウトたちの情報合戦は続いていくはず。プロの世界を巻き込む騒動を起こすこと自体が、"奇跡のプレー"と言えるかもしれない。

安楽に続き、ほぼ全球団のスカウトから熱視線を受けているのが、昨年夏の優勝ピッチャー・高橋光成投手(前橋育英)だ。MAX148キロのストレートと縦のスライダー、フォークを武器にする好投手で、「西の安楽、東の高橋」と、その評価は高い。

昨年の大会後、指を骨折。予想以上に回復が遅れ、ぶっつけ本番に近い形で県予選に登板したが、ケガのハンデもあって予選敗退、甲子園連続出場を逸した。

「骨折は治れば後に響かないので、スカウトも安楽ほどは心配していません。間違いなくドラ1候補です」(全国紙運動部記者)

また、群馬大会を制した健大高崎は、高橋のスライダー対策として、"秘密特訓"を敢行したという。

「高橋のストライクからボールになるスライダーを振らされないように、ストライクゾーンの低めいっぱいに糸を張っての打撃練習を行ったそうです。糸より下を通るボールは徹底的に見送る。こうした秘策を経て、健大高崎は昨年の優勝投手を打ち砕きました」(前同)

秘密特訓が行われること自体が、怪物の証明と言えるだろう。

その高橋を打ち込んで、名を上げた選手がいる。群馬県代表として出場した健大高崎の主砲・脇本直人外野手である。「上州のゴジラ」の異名を持ち、高校通算57本塁打を放つ、大会屈指のスラッガーだが、2回戦の利府戦で新たな顔を見せた。

「1試合で4盗塁を成功させ、走塁技術の高さも見せつけました。スカウトの評価は、またひとつ高まりましたね」(スポーツ紙記者)

安楽、高橋の二大投手が甲子園出場を逃す中、今大会の出場投手でナンバーワンの呼び声が高いのが、盛岡大附属の松本裕樹投手。最速150キロのストレートにカーブ、スライダー、チェンジアップと多彩な変化球を操り、制球力も抜群。

「初戦の東海大相模戦では、雨でぬかるんだグラウンドコンディションを考慮に入れ、速球に頼らず変化球で打たせて取るピッチングに徹していました。そうした切り替えができる"能力"の高さに、スカウトたちの評価はうなぎ登りです」(スポーツ紙デスク)

3回戦で敗退した松本投手だが、阪神が1位候補に挙げているとの情報もあり、指名候補に挙げるチームは増えるだろう。

今大会で、松本に苦杯をなめさせられたのが東海大相模。伝統的に強打がウリのチームだが、今年は青島凌也、佐藤雄偉知、小笠原慎之介、吉田凌各投手の4人が、"140キロカルテット"としてクローズアップされた。

敗れた盛岡大付戦でも、そのうち3人で奪った三振は15個。27アウトの半分以上が三振という計算だ。

「亡くなった東海大相模の原貢監督が、3年前の秋、"来年から、すごい投手が立て続けに入ってくるんだ。これから東海大相模の黄金時代がやってくる"と相好を崩していたのを思い出すね」(ベテラン記者)

140キロカルテットの2人が、まだ2年生というから末恐ろしい。12年度のジャイアンツカップの優勝投手・小笠原と県大会決勝で20三振の快投を見せた吉田の2年生コンビは、来年も大暴れして、ドラフトにおいて高い順位で指名されるのは間違いない。

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