1人しかいない部屋で畳を踏む誰かが!
10年ほど前のことです。
私が中学2年のとき、事業に失敗した父が失綜。それまで住んでいた家は借金の形に取られてしまい、残された私たち(母、弟、私)は、近所の格安アパートへ移り住みました。
家賃が安いだけあって、そのアパートはボロボロ。木造2階建ての外壁はすっかり塗装が剥げ落ちています。正直、こんなところに住む原因を作った父のことを恨みました。
しかし、私以上にショックを受けている母が、愚痴ひとつ言わず気丈に振る舞っています。私も母を見習い、努めて明るく振る舞おうと思ったものです。
私たちの部屋は1階の3号室。古いながらもバス、トイレ付きの2DKです。
この部屋で生活するようになって、1週間ほどすると奇妙なことが起こり始めました。うたた寝していると、私しかいないのに「ミシッ、ミシッ……」と、畳を踏む音が聞こえます。
人の気配を感じるのです。弟も1人で部屋にいるとき、誰かに見られているような気がすると言い始めました。
母にそうしたことを話すと、「新しい生活を始めたばかりで気が張ってるから、敏感になってるんじゃないかしら」
と一笑されました。たしかにそうかもしれません。この話題はこれで終わりました。