墓石の前でお供えの柿を食べていた……

「さあ、入るぞ~!」

聡が声を掛けたと同時に、車は霊園の門をくぐった。

まずは先輩がオススメしていた8区エリアに向かう。

車中とはいえ、墓に固まれた道を進んでいる。さらに灯りがないので、いやでも恐怖感が高まっていく。信じていない自分でさえも怖さを感じる場所だ。

「あそこに人が立ってる。ほら、あそこっ!」

美奈子の言葉に反応した聡がブレーキを踏む。3人が美奈子が指差すほうに顔を向ける。

「どこ、どこ、どこ?」
「あそこの大きなお墓……右のところに、おばさんぽい人がぼーっと立ってるじゃない」
「いや~、わからないな」
「恐怖心で見た気になったんじゃないのか?」
「あそこに……って、おばさんがこっちに向かって来てる!! ヤバいよ! 早く出してっ」

納得いかないといった感じでアクセルを踏む聡。

ノロノロと100メートルほど進んだところで、
「ここで降ろしてくれ!」

そう言って義之は、車を降りて先の路地を入った。どういうこと? わけがわからないまま、懐中電灯を片手に義之を追う。と、なにやら右前の墓石のところで、ゴソゴソと動いているものが! すかさずそこを懐中電灯で照らすと……義之だった。なにをしてるんだ?

3人一緒に近寄っていくと、
「なにやってんの!?」

美奈子が声を上げた。それも当然、義之はお供え物だったであろう柿を食べていたのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3