地面から手が出て足を掴んでるぞ!

「佐藤、あれ、なんだろう?」
「あれは……戦国時代の侍。首から下がなくて浮いてるな」

自分には見えないものが、佐藤にはしっかり見えている。が、いずれにしてもマズい。心臓がバクバク高鳴る。

慌てて立ち上がり、石段に向かおうとすると、
「うわああ~……地面から手が出て足を掴んでるぞ」

佐藤が叫ぶ。彼には無数の手が、植物のように地面から伸びて、蠢いているように見えたそうだ。

たしかに重い……まるで水の中を歩いているようだ。手は見えなかったが、僕もいつもより足が重く感じられた。

そうこうするちにも白いモノが近づいて来る。あと3メートル、2メートル……寸前のところで石段に辿り着くと足が軽くなった。全速力で駆け抜けた。

「危ないとこだったぞ!」
と言った佐藤は顔面蒼白。聞けば、白いモノは近くまで来たときには全身があり、刀を振りかぶっていたというのだ。

それ以来、2人はその城址跡に、昼間であっても近づかなくなった。

『本当に体験した! 恐怖の心霊報告書』¥700(税抜)双葉社

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