40~50代から準備を始めたい

「たとえば、糖尿病の治療に使われるインスリンの点鼻薬を、認知症治療に応用する研究も行われています。また、脳梗塞の再発を予防する、いわゆる"血液サラサラ薬"のシロスタゾールが、症状の進行を抑える可能性があるとの研究成果が、テレビ番組でも紹介されて話題を呼びました。さらに、アルツハイマー病を予防するワクチンも、かなり前から研究されているものの、これらが実用化されるまでの道はまだまだ遠いんです」(前同)

治療法がないなら、予防するしか方法はない。そこで注意したいのは、「アルツハイマー病をはじめ、認知症の原因となる病気は長い年月をかけて進行していきます。物忘れなどの症状が出てきて、周りが"おかしい"と気づくよりも20年も前から、脳の中の変化は始まっているんです」(前出・医療ジャーナリスト)

つまり、60代以降に認知症になることを阻止するためには、40~50代から準備しなければいけないというのだ。

そこで本誌では、認知症研究に関するさまざまなデータをもとに、認知症を予防するための究極のコツを7項目にまとめた。いずれも、今日から実践できるものばかりだ。

ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を
大まかにいって、短距離走や筋トレ、重量挙げなど、筋肉を鍛えるのが「無酸素運動」。

その一方、軽い負荷の運動を長時間行うことによって心肺機能を刺激するのが「有酸素運動」だ。具体的にはウォーキングやジョギング、水泳などである。「運動すると、脳の神経細胞を新たに作る物質が増えることもわかってきました。有酸素運動が認知症の予防に効果があるという研究結果も報告されています。ただし、自転車はあまりお勧めしません。街中では歩くよりも運動効果が低いうえに、転倒して頭を打つ危険性がありますからね」(羽生教授)

まずは、一日30分歩くことから始めてみたい。

サプリメントだけに頼るなかれ
「イチョウ葉エキス」や「DHA」「EPA」など、これまでいくつものサプリメントが、脳機能の活性化に効果があると言われ、そのたびにブームになってきた。

しかし、「これらのサプリは、健康増進にプラスにはなるでしょうが、残念ながら認知症の予防効果はないことがわかっています。必要な栄養素は、やはりきちんとした食事から摂りたい。ご飯や麺、パンなど糖質の摂取量を抑え、抗酸化作用のある緑黄色野菜や、魚を積極的に食べるのがいいでしょう」(前出・健康雑誌記者)

よく噛み、歯を磨く
「歯と口腔のケアは、実は認知症予防の重要なポイント。噛むことは脳への刺激につながるんです」(歯科医)

また、毎日の口腔ケアで歯周病を予防し、健康な歯と歯ぐきをキープするよう心掛けたい。よく噛んでゆっくり食べることによって、インスリンの分泌もゆるやかになり、メタボの予防にもつながって一石二鳥だ。

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