9月14日に初日を迎える大相撲秋場所の新番付が、1日に発表された。

「今回の番付での最大の注目力士は、関脇になった豪風[たけかぜ](尾車部屋)です。2003年春場所の新入幕から68場所かけての新関脇昇進は史上最も遅いペース。35歳2か月での昇進も戦後最年長となります」(全国紙運動部記者)

豪風の記録はスロー出世だけではない。先場所の名古屋場所で、「豪風は9日目の日馬富士(はるまふじ)戦で初金星を挙げたんですが、1958年に年6場所制になってからは、最年長となる初金星です。この名古屋場所で9勝6敗と勝ち越したことが評価され、関脇に昇進しました」(スポーツ紙記者)

師匠の尾車親方も弟子の昇進に、「自分は28歳で引退している。35歳でこれだけ勝てるのは本当に立派」と賛辞を惜しまないが、他の部屋の親方衆からも祝福の声が上がっている。

「人間関係を大切に考えているんでしょう。酒の誘いは絶対に断らない。埼玉県にある自宅から新宿まで駆けつけてくれたことがあって、逆に恐縮したよ。周りが見えていて、気配りも完璧。ほかの部屋の親方衆からもかわいがられている。今場所もみんなが応援しているんじゃないかな」(相撲協会関係者)

義理堅さと気配り上手で周囲から慕われる豪風。

35歳と決して若くない年齢で着実に勝ち星を挙げて昇進を決めた理由は、その気配りと知性にあるという。

「とにかく己を知っている力士だね。身長170センチと小兵ながら、その背の低さと広い肩幅を生かした重心の低い押し相撲が持ち味。だから、立ち合いのぶちかましは強烈なものがある。手首、足首、首という"首"が付く部分が総じて短いのも、低重心を生む秘密のようです」(相撲記者)

そして、ぶちかまし以上に高い評価を受けているのが、角界屈指の理論派とも言われる取り口。

「尾車親方によると、当たりの強さで勝負するより、相手の弱い部分を正確に突くことを重視しているとのこと。初金星を挙げた日馬富士との取組でも、立ち合いで横綱がバランスを崩した隙に押し出した。あれは完全に狙ってたね」(前同)

敵を知り己を知れば百戦あやうからず――

古代中国の兵法書『孫子』にあるように、体格と年齢というハンデを鋭い読みで補い、勝ち星を積み上げ、関脇まで昇ってきた豪風。

次は最年長での大関昇進だ!

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