順当なポストもあれば、サプライズ抜擢もあった新内閣の顔ぶれ。発足間もない新閣僚の実力を徹底調査!

9月3日、ついに第2次安倍改造内閣が発表された。

1年8か月(617日)にわたり一人の大臣の首を切ることもなく、順風満帆な航海を続けた安倍政権。

「一人も大臣を替えなかった期間で言えば、戦後最長記録になります。とはいえ、これからは年末の消費増税判断や来春の統一地方選など重要課題が目白押しです。首相は、ここで再び体制を整え、さらに強化された新・チーム安倍を結成。挙党体制で荒海に乗り出す決意を固めました」(全国紙政治部デスク)

組閣にあたって、まず首相は政権の屋台骨を背負っている中枢閣僚の留任を早々に決定した。

具体的には、麻生太郎副総理兼財務相兼金融相、菅義偉官房長官、甘利明経済再生相の安倍懐刀3人組だ。

「この3人は、いわば安倍首相と一心同体ですからね。同時に、安倍首相に忠実な前線部隊長たち、岸田文雄外相や下村博文文科相らを同職にとどめ、安倍カラーを今後とも一切薄めないことを内外に表明しました。また、高村正彦副総裁を党対策の"重し"として留任させるなど、万全な態勢で改造に臨みました」(自民党中堅議員)

ただ、「内閣改造をするたびに政権の求心力が落ちる」は永田町の"不文律"。

「そりゃ、そうでしょう。議員たるもの、誰でも大臣になりたい。新大臣が注目を集める裏では、ポストを解任された人や、期待していたのにポストにつけなかった議員たちの不満が爆発します。そのため、政権にほころびが出てくるのも永田町の常です」(前同)

その典型が、組閣前に起きた"石破騒動"だった。

「幹事長職を切られ、"格下"の安全保障法制担当相(安保法制相=特命大臣)の"内示"を受けました。特命大臣は下に省庁=部下を持たず、通常の大臣職より1枚格が落ちるため、石破茂幹事長(当時)は猛反発。一時、反安倍に動きかねない気配濃厚でしたが、結局は安倍軍門に屈服した。党内で"男を下げただけ"ともっぱらです」(安倍首相に近い自民党中堅議員)

その石破氏に代わって、新幹事長に就いたのが谷垣禎一・前法相。予想外の人選に、永田町では"サプライズ就任"の声も上がった。

「谷垣氏は、自民党が苦しい野党時代に総裁として党を支えた功労者です。温厚な人柄で他派の信頼も厚い。ただ単なる論功行賞人事ではない。財務大臣経験者ですから、消費税10%引き上げに向けて、脇を固めるには適任。党総裁時代に民主・自民・公明の3党で難関の消費増税を取りまとめたことからわかるように、政治的な実力もちゃんとある方ですね」(前同)

もちろん、谷垣氏の重用には首相の思惑もある。

「谷垣氏を重要ポストにつけることで政権内に取り込み、党内の"反安倍"を幹事長ポストで吸収する狙いもあると同時に、来年9月の総裁選出馬の芽を摘み取るウルトラ技でもあります。あの石破氏を幹事長という"座敷牢"に閉じ込めたのと、まったく同じ手法です」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

安倍首相は返す刀で残りの党三役もすべて刷新した。

野田聖子氏に代わって二階俊博・前衆院予算委員長を総務会長、高市早苗氏の代わりには稲田朋美・前行政改革担当相が政調会長に。さらに選対委員長には茂木敏充・前経産相が就任した。

二階総務会長は、衆院当選10回の大ベテラン。運輸相や経産相などを歴任、二階派の領袖でもある。

「二階氏は喧嘩上手。駆け引きでは、永田町で彼の右に出る人はおりません。また、表裏、なんでも平然とできる人物。大ベテランをつけることで、党を安定的に運営するのが狙いです」(ベテラン政治記者)

一方、政調会長となった稲田氏は従順な"安倍応援団"ぶりが評価された様子。

「第2次安倍内閣で、行革相として首相が掲げる規制改革に取り組んだ姿勢が評価されました。政治信条は首相に近い保守派。行革担当相時代も靖国参拝を欠かさない"信念の人"との評です」(前同)

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