統一地方選対策に小渕氏抜擢

この党役員刷新の煽りをモロに受けたのが、石破茂・前幹事長だった。自民党内では「石破さんは降格人事」と噂されているという。

「地方創生担当相として入閣しましたが、所轄の省庁を持たない特命大臣の身。石破氏は、前職の幹事長と同じく地方回りを重ねて"いざ、その時!"に備えると判断したようですが、実際は閑職に追いやられたとの声が主流です」(政治評論家・浅川博忠氏)

その石破氏が固辞した安保法制相を射止めたのは、江渡聡徳・前衆院安全保障委員長だ。

「防衛相も兼務する大抜擢です。同氏は防衛官僚や自衛隊幹部からの信頼が厚く、党内からも安保関連法案の国会答弁を担うに適任との声も多い。政権運営を考えれば、いい人選でしょう」(全国紙自民党担当記者)

政治信条は安倍首相に近く憲法改正に賛成。また、首相が副会長を務める日本会議国会議員懇談会のメンバーでもある。ちなみに、同会議は"日本最大の右派組織"とも評され、自民党を中心に289人の保守系国会議員が参加している。

組閣前に話題を集めた女性大臣の登用だが、今回入閣したのは5人。そのうち、高市早苗総務相、山谷えり子拉致問題担当相、有村治子女性活躍担当相の3人が同会議懇談会メンバーだ。

「右派組織との異名どおり、3人が3人とも、それに通じる発言や行動をしています」(前同)

たとえば、高市総務相は「(満州事変と日中戦争を)自衛のための戦争だった」と公言し、侵略性を否定。

山谷拉致問題担当相は、首相の靖国神社参拝を求める運動を推進し、12年8月には尖閣諸島で船上慰霊祭を行っている。

有村女性活躍担当相は、中国人監督によるドキュメンタリー映画『靖国』を反日的だとして糾弾。上映中止に向けて動いた"武勇伝"の持ち主だ。

「有能な女性議員ばかりですが、なかなか個性の強い面々が並びましたね。勇ましい言動が失言や国会答弁でのトラブル発生にならないといいのですが……」(前出・ベテラン政治記者)

一方、同じ女性大臣でも今改造の目玉のひとつが、小渕優子・前財務副大臣の経産相抜擢人事だ。

「当初、安倍首相は小渕さんを幹事長に据えたかったんです。ただ、年齢が若すぎるという声に押され、経産大臣に落ち着きました。小渕恵三・元首相の長女という毛並みのよさに加え、父の地盤を引き継いだことで選挙が抜群に強く、スキャンダルとも無縁。演説がうまく、選挙では応援弁士として引く手あまたです。来春の統一地方選での"看板"として、すでにすり寄る議員も現れていますよ」(前出・自民党担当記者)

新幹事長が地味(失礼!)だけに、選挙では小渕経産相が全国を飛び交うことになりそうだ。

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