アジアはもとより、世界の金融センターの一つに数えられている香港。今日においては、シンガポールや上海などの台頭によって、イギリス領有時代のような圧倒的な金融パワーはややダウンしたものの、それでも、香港は世界でもトップレベルの「タックスヘイブン」として、まだまだ大きな魅力を放っているといっていいだろう。

そもそも、香港の主権そのものは、'97年に英国から中国に返還されたが、意外に思われるかもしれないが、金融センターとしての香港は今でもイギリスの金融センター、ロンドンのシティとの結びつきが極めて強いのだ。

そうした状況を中国が面白く思うはずがない。しかし、香港が返還された時点で、中国がそうした香港の特殊性を否定するような行動に打って出たならば、今日のような中国経済の発展はなかっただろう。香港は、ある意味で共産・中国の経済が発展していく上で、西側(先進資本主義国)の資金を呼び込むために必要不可欠な“装置”だったのだ。

こうして香港は、「一国二制度」という形をとることで、高度な自治が認められることとなった。だが、中国経済が大きく成長し、上海がアジアの金融センターとして発展してくると、中国政府にとって香港の魅力、必要性は大きく薄らいだ。むしろ、上海のライバルとして、香港は目障りな存在になってきたといえる。

つまり、ここ最近の中国共産党及び政府の香港に対する締め付けは、“香港回収”の総仕上げと見るべきだろう。そしてそれゆえに、中国当局が香港の“民主派”に譲歩することは絶対にあり得ない。

香港が中国に名実ともに回収された後に、まず台頭してくることが期待されるのは中国の民間資本をベースにした「金融機関」と見ていいだろう。そうした新興金融機関の最右翼になりそうなのが、意外にも、ネット通販大手の「アリババ」(先日上場し、初日につけた株価からみた時価総額で2314億ドル=約25兆円が話題に)なのだという。

だとしたら、「アリババ」の大株主に名前を連ねるソフトバンクは、絶対に“買い”だろう。


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