元特捜検事、元弁護士、元受刑者――。異色の経歴を持つことで知られる田中森一氏(71)が9月25日、悲壮な決意を綴った自叙伝『遺言闇社会の守護神と呼ばれた男、その懺悔と雪辱』(双葉社)を出版する。

「1971年に検事に任官した田中氏は、大阪、東京地検のエリート集団・特捜部などで、伝説のエース検事として数々の疑獄事件を担当。88年に弁護士転身したあとは、バブル時代の経済事件で暗躍した大物ヤクザや仕手筋など、裏社会の住人たちの顧問を数多く務め、"闇社会の守護神"が代名詞となった」(全国紙社会部記者)

その中でも特に昵懇だったのが、80年代から90年代、政界と裏社会をつなぐフィクサーとして、多くの事件でその名が取り沙汰された"闇の帝王"こと許永中だ。

2人は2000年、石油卸商社・石橋産業を舞台にした200億円の手形詐欺に絡み、東京地検特捜部に詐欺の容疑で逮捕される。

「2人が詐欺を共謀した直接的な証拠はなく、田中氏も公判で一貫して無罪を訴えたが、08年に実刑が確定。古巣の特捜部にとって、事件を未然に潰す敏腕弁護士だった田中氏は言わば天敵で、典型的な"国策捜査"と話題を集めた」(前同)

収監後、別の詐欺事件で再逮捕された田中氏。獄中では死の淵を彷徨った。

〈「631番(編集部註・田中氏のこと)、この前の検査の結果、がんの疑いがある。医療刑務所に護送や」〉それでも、自らに貼られた詐欺師のレッテルを返上するという一心で、一昨年11月、約5年に及んだ独居房での服役を終え、滋賀刑務所から仮出所(翌年に刑期満了)を果たした田中氏。

"自分は正義なのか悪なのか!?"―― 自問自答しながらも、今なお身の潔白を訴える最中、再び試練が訪れる。がんの"再発"だ。

今回、これまでの数奇な半生に決着を付けるべく、自叙伝の出版を決意。

昨年、母国・韓国の刑務所を仮出所したかつての盟友・許永中との知られざる秘話を赤裸々に綴りながら、事件の真実を明らかにしている。

〈これまで公式には、逃亡中の許永中とは会っていないと語ってきたが、実は数えきれないぐらい会っていた〉

指名手配中の許永中が画策した、政界を巻き込んだ極秘プロジェクトの数々。その一部始終を目の当たりにしてきた田中氏の人生のラストランに、古巣の法曹界のみならず、アウトロー界全体の注目が集まっている――。

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