雲仙普賢岳での経験が生きる

「ヘリ機動を主とする第12旅団には、タイヤでなくキャタピラ式の重装甲車は配備されていない。そこで急遽、富士にある普通科教導連隊から、89式装甲戦闘車4両と、40年前の装備である"古参兵"73式装甲車を1両借りたんです。これら装甲車は頑強な車体を持ち密閉性も高いため、ガスにも耐えられますから。今回は、雲仙普賢岳での災害派遣の経験が大いに生きました。早くから装甲車に目を付けたのもあの時の経験があったから。また、雲仙ではヘリのエンジンに火山灰が入り込み、飛行中にトラブルを起こしたこともあったため、今回はヘリの使用に細心の注意を払いました」(東部方面総監部)

そのため、テレビでも連日報じられ、大活躍した万能ヘリUH-60JAは、「エンジン吸気口にフィルターがかけられており火山灰対策も万全」(前同)だった。同ヘリの愛称は「ブラックホーク」。米軍では特殊部隊の輸送にも使われているほどで、イラクやアフガンで活躍している。夜間や荒天に強く、パワーもあり、輸送能力も高い。ブラックホークは、山岳レンジャーたちを乗せて、火山灰で埋もれる山頂を目指して飛行。気流の激しい地上3000メートルの場所でのホバリングによる救助は至難の業だったが、彼らは恐るべき練度と勇気で、それを見事やってのけた。

日本最大の霊峰・富士山が万一噴火した際も、第12旅団並びに第13普通科連隊の山岳レンジャーたちが出動するのは間違いない。

(この項=取材・文/ジャーナリスト・菊池雅之)

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