――スタッフも熱いですね。
小沢 そりゃあ、だって気持ちいいもん。広大なオープンセットの大通りにエキストラを500人呼んで、昔の車をバンバン走らせて。24時間の契約だから、その24時間をフル稼働させて、撮れるものは全部撮りまくった。モニターも見えないのに、巨大クレーンにちっちゃいカメラをガムテープで止めて、ブワ~~っと引きの画を撮ったりね。みんなイキイキしてたな。で、パッと見るとエキストラ200人くらいが脇で休んでるんだよ。「なんでわざわざ500人も呼んだのに休んでるんだよ!」って聞いたら「人を入れ過ぎたら車がかっこよく走らないから」って(笑)。
――贅沢ですね!
小沢 そういう活劇スピリッツみたいなもんがVシネマにはあって、いいと思うね。
そもそも映画だったら、たとえば金属バットで殴って血がバ~っと出たら「カットね」といわれる。でもVシネって関係ないから。どれだけやりまくれるか(笑)。『組織犯罪対策部捜査四課 通称マルボー』って作品で、東京都知事暗殺計画って話をやったんだけど、俺、ゲリラでロケやったもん。
――ゲリラで撮影すること多いんですか?
小沢 ほとんどそう。そして、エキストラ呼べない時は歌舞伎町。なんかそれっぽい感じの人がいっぱい歩いてるじゃん。俺、歌舞伎町一番街を「待て、コラ~~!」とか言いながらしょっちゅう走ってるよ。
――雑誌だと、歌舞伎町でカメラは出すな、というのが鉄則なんですけど……。
小沢 俺は危なくないもん。地回りが来ても「あ、小沢さんか」と思うだけ。
――それ、小沢さんだからできる独自の技ですよね(笑)
小沢 まぁ、歌舞伎町は俺の生まれ故郷だからな。百人町生まれだから。中学生の大半は歌舞伎町にいたから、みんな大目に見てくれるんじゃない?(笑)
やっぱり見る人は、歌舞伎町で撮ってたら「お!」っと思うわけよ。だったら、たとえば歌舞伎町で銃を構えて倒れる画だけ撮っておいて、あとでCGとか効果音を足せば「すっげ~本当に歌舞伎町で撮ってるよ」と思う。 お客さんはその臨場感を楽しみたいわけ。
あと、歌舞伎町って実際にいろんな事件が起こるだろ? パトカーが止まってて、おまわりがいっぱいいて、やじ馬が集まってるような場所を見つけたら、そこに役者を行かせる。それで警官に「おう!」と敬礼して、道を聞いてこさせる。声なんて入らないからな。それを刑事が犯人を捜してるシーンに使ったり。
――あとで怒られないんですか?
小沢 パトカー撮ってたら「なにやってんだ!」っておまわりが来たんだけど、役者に「すみません、パトカーマニアなんで」って言わせたよ(笑)。
映画だといろんな人の責任問題になるかもしれないけど、Vシネってそのへん気にしない人が多いから、そういうところも俺は好きだね。
――あの手この手ですね(笑)。
小沢 そりゃそうだよ。それでスケール感が出て、ライブ感というか、臨場感がでたら最高だろ? そういうのがいいんだよ。
――出演した500本以上の作品のなかで、特に印象に残っている作品はありますか?
小沢 Vシネマもいろいろと流行があるんだけど、一時期、実録ブーム(実話をもとに伝説のやくざ、組織、エピソードなどを描く任侠Vシネマ)があった。実録ブームの初期の頃、Vシネマで作った『広島ヤクザ戦争』は印象に残ってるな。 予算もデカかったし、Vシネマっていうよりは、映画館でやらないだけで完全に本編みたいな構えがあって。すごかったね。
――いまはちょっと考えられないですけど、当時は実録モノって、本物の方も現場に見学にきたりしていたって聞いたことあるんですけど、いざこざがおこったりしなかったですか?
小沢 いや、そんなのはないよ。そういうことはないけど、暴対法ができる以前は、某先輩が名だたる親分をセットに連れてきて困ったことはあった。俺が某有名な方の役をやっているときで、その親分が「お前かぁ、俺の親父をやってるのは。頼むぞ!」って来て、ずっと俺のことを見てるんだよ。これはもう、やりにくいぞ~(笑)。
――そういうときはどういう気持ちでやるんですか?
小沢 文句は言わせねぇよ、みたいな。そういう意味では気合い入るけどね。でも監督より存在感のある人たちがバンバンバンって揃っているわけだから。もう、独特の雰囲気だったね。
―――アクションシーンなどで、小沢さんご自身が危ない目に合ったことはないですか?
小沢 そりゃフィリピンとか海外に行けばいろいろあるよ。でもアクションシーンでケガをするのは、別に俺が好きでやってることだから、痛くても痛いとは言わないし、病院にも行かない。行ったら撮影が止まるから。
肩の筋肉を切ったときだって撮影を続けたもんな。自分では手が上げられないから、スーツを切って後ろから腕に添うように棒を突っ込んでおいて、助監督が後ろから棒を上げたら俺の手が上がる、みたいな(笑)。そんなことばっかり。