まずは正しい姿勢と歩き方を

まず何より大事なのは、(1)「歩く習慣」 があるかどうか。
近所のスーパーやコンビニにもつい車を使い、階段があってもエレベーターやエスカレーターに乗る。
そんな人は要注意だ。

「足腰の強さは若さの基本。寝たきりになる原因の1位が脳卒中、2位が老衰ですが、3位は転倒・骨折。これは足腰が丈夫であれば防げること」

歩く際には、正しい姿勢が重要だ。
野呂田氏が自ら実践しながら解説する。
「日本人は姿勢が悪い。特に猫背の人が多いです。約5キロある頭の重さに耐えられず、視線が下を向き、背すじも曲がってしまうのです。ですから視線を上げて、胸を張り、背すじを伸ばすことを常に意識しましょう」

また、猫背のままで歩くと重心が前に偏り、歩幅が狭い歩き方になる。
「私は"高齢者のコチョコチョ歩き"と呼んでいます。この歩き方だと、つま先だけで歩くのでつまずきやすく、これが転倒、骨折につながってしまうケースが多いですね」

そのため、50代から正しい歩き方を身につけておきたい。
視線を上げ、胸を張って背すじを伸ばし、股関節の動きを意識しながら少し大股で歩く。
全身を使うので、腹はへこみ、足腰が強くなる。

「50代から運動して"筋肉貯金"をしておきましょう。高齢者の話題といえば"いい薬はないか、いい病院はないか"ですが、私は"運動ほどいい薬はない"と思いますよ」

また、(2)「趣味を持っていること」 も大切だ。
仕事一筋で、休日は寝ているかテレビを見るぐらい。
こんな人がリタイアすると、何もすることがない。
「趣味というと、ゴルフだ、釣りだ、と思いがちですが、競馬でもパチンコでも本屋通いでも何でもいいので、仕事以外の楽しみを一つ、二つ見つけておきたい。リタイア後に"俺はもうダメ"と老け込む人は、仕事一筋で、無趣味な人が多いですよ」

趣味にも関連するが、(3)「仲間がいる」 かどうかも大きい。
交友関係は仕事関連のみで、休日はもっぱら引きこもり。
そんな人はリタイア後、誰ともしゃべらなくなってしまう。
飲み仲間でもカラオケ仲間でも作っておきたい。

「高齢者は積極的に外に出ることが大事。外に出て、いろんな人と話をしたり、いろんな場所に行けば頭も活性化します。家にいてテレビを見ているだけでは刺激されません」

日頃の健康チェックも大切だ。たとえば、(4)「体重計に乗る習慣」 があるかどうか。
成人男性の場合、ウエスト85センチ以上だと「メタボリック・シンドローム(メタボ)」と診断される。
長年、健康診断でメタボ認定をされて「どうせ、こんなもんだ」とタカをくくっていないか。

太り過ぎのままで高齢者になると、恐ろしい未来が待っている。
「体重が1キロ増えると、膝への負担が5キロ増すと言われています。膝の痛みに悩む高齢者が日本にはとても多くて、"膝が痛いから動かない。動かないから太る。太るからもっと膝が痛くなり、ますます動けなくなる"という悪循環に陥るのです」
そうならないために体重のコントロールが不可欠だ。

よく、20歳の体重を維持するのが理想とも聞くが、野呂田氏は大幅な減量には否定的だ。
「40代以上で急激なダイエットをした人を見ると、すぐリバウンドしてもっと太ったり、スタミナ不足になって活動量が落ちるケースが多いと感じます。私は、メタボでなければいいという考えですね」
急激なダイエットは骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を引き起こすことにもつながる。少しずつ体重をコントロールし、まずは、脱メタボ。

そのためにも、(5)「定期的な健康診断」 は欠かせない。
会社勤めなら会社の定期検診で済ませられるが、自営業者やリタイアした高齢者は任意になる。
ずっと病気一つせず、健康に自信があるという人でも、50代になれば定期的なチェックを習慣づけたい。
「自覚症状がなくても、心臓や内臓に問題があると、健康のためにしているはずの運動が、逆に、新たな病気を引き起こす危険があります」
健診で、内臓も元気であることを確認しておきたいものだ。


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