「たとえ神社が作っていようとも、御神酒ですら酒税が課せられている。まず何より、公平・公正が求められる税制にあって、発泡酒や第三のビールなどのような抜け穴が許されていいわけがない。今回の対応は、当然のことをしたまでです」
筆者とは旧知の間柄にある国税庁の幹部が、こう断言する。

政府・与党は、ビール類に課せられる酒税に関して2015年度税制改正で大幅な見直しを進め、「発泡酒」と「第三のビール」の区分別けをなくした上で、それぞれの税額を引き上げる方針を固めた。

とはいえ、一気に同額に引き上げるのではなく、何段階かに分けて引き上げていく方向だ。加えて最終的には、新区分となるビールの税額と、これまでビールとして扱われてきた酒類の税額を揃えるのだという。

つまり来年から、「発泡酒」と「第三のビール」の酒税が引き上げられ、それと連動する形で小売価格が引き上げられる公算が大になってきた。
こうした方針の決定は、今後、関係各方面から様々な反発が出てくることは間違いない。

いずれにしても、今回の方針決定にあたって、国税当局の強い意向が働いていたことは、前述のコメントからも明らかだろう。

それにしてもなぜ、国税当局は国民からの強い反発が予想されるにもかかわらず、前述したような対応をとる方針を固めたのであろうか。

「ひと言でいってしまえば、サッポロビールがもともと第三のビールとして販売していた『極ZERO』を巡る問題が発覚したことがきっかけとなった」(前述の国税庁幹部)

2013年に発売された『極ZERO』は、サッポロビールにとっては唯一ともいえるヒット商品だったにもかかわらず、その理由もあいまいなまま、今年6月に突然、販売を中止した。そして、7月から第三のビールから発泡酒へ区分を変更した上で再販売することになったのだ。

しかし、なぜサッポロビールがそうした対応をとることになったのか、今に至るも明確な説明がされていないのが実情だ。

「サッポロビールは、『極ZERO』をリキュールということで販売していたのですが、その実態は発泡酒だったのです。そのことに気がついた国税当局が、サッポロビールに是正を迫ったのです」(関係者)

このことからも明らかなように、実をいうと「発泡酒」と「第三のビール」の境界線は相当に曖昧だといっていい。

「我々、国税当局としては、現在販売されている第三のビールの中にも、いくつか怪しい、つまり発泡酒ではないかと思われるものがいくつかある、と見ているのです」(前述の国税庁幹部)
このため、両者の区分を撤廃しようということになったようだ。

せいぜい今のうちに、「第三のビール」を楽しんでおこうではないか。


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