第75回菊花賞、秋晴れの淀競馬場に金菊の大輪が咲いた。

金色のたてがみをたなびかせた尾花栗毛のトーホウジャッカル。3分1秒のレコードタイムで淀の3000mを先頭で駆け抜けた。クラッシック登録がなく、追加登録料(200万円)を支払って出走し、見事デビューから最短149日でクラッシック競走を制したのだ。

しかし、この馬の持つドラマはそれだけではない。彼は東日本大震災の日、2011年3月11日に北海道日高町で生を受けた。そして、2歳時に腸炎を発症し、体重が50kgも減少。デビューどころか、命の危機さえあった。

なんとか回復し、デビューにこぎつけたのは、日本ダービー前日の今春5月31日、京都の未勝利戦である。結果は、10着に終わった。

鞍上の酒井学騎手は何か光るものを感じたのだろう。このレース後に志願し、3戦目で再び騎乗機会を得ると、未勝利戦、500万条件と連勝。続く1000万条件2着、菊花賞トライアルの神戸新聞杯で3着に突っ込むと、迎えた本番・菊花賞で、従来のタイムを1秒5も縮める日本レコードで駆け抜けた。

谷潔調教師はGⅠ初制覇、トーホウジャッカルの父・スペシャルウィークは念願の牡馬産駒のGⅠ初制覇、酒井騎手はクラッシック初制覇と、初物尽くしであった。

3.11の日に生を受けたジャッカルが持つ、何か特別な力がもたらしたドラマチック。これから、どんな走りを見せてくれるのか。同馬のVロードは、まだプロローグにすぎないのかもしれない。

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