「世界自然遺産に登録された小笠原諸島の周辺で中国漁船によるサンゴの密漁が急増している。目に余る無法行為だ」(11月2日付讀賣新聞朝刊、社説から抜粋)

この記事の書きっぷりからもわかるように、ここ最近激増している、中国のサンゴ密漁漁船に対する日本国内の批判が、一気にヒートアップしている。

とはいえ、中国政府が本気で取り締まりを強化しない限り、密漁漁船の違法操業はなくならないだろう。日本の海上保安庁が少々密漁者を逮捕したところで、ほとんど効果らしい効果は出ないだろう、というのが筆者の見立てだ。

それというのも、密漁者のターゲットである赤サンゴが、中国本土で極めて高い価格で取り引きされているためだ。聞くところによると、日本産の赤サンゴは、中国・上海では1gあたり約15万円という、とんでもない高値で取り引きされているのだという。純金よりも高値で取り引きされているのが実情だ。つまり日本近海は、エルドラド(黄金郷)とでもいうべき状況になっている。

しかも、その所有者である日本の取り締まりがユルユルの状態にあるとなっては、中国漁民の殺到は止められまい。「儲けた者勝ち」を基本的な行動原理とする中国漁民は、ストレートに市場原理に従って行動する。

つまり、今の日本近海のサンゴ漁は、リターンがリスクを大きく上回る。いってみれば、ほんの少しのリスク(具体的には日本の官憲に逮捕されて支払う少々の罰金など)を引き受けたならば、一攫千金も夢ではない。だからこそ、サンゴ漁に殺到しているのだ。

だとしたら、リターンを大きく上回るリスクを課せば、中国漁民はまったく近寄ってこない。具体的には、莫大な罰金の設定、あるいは漁船の没収などをしたならば、中国漁船は消えてなくなるだろう。


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