イラスト/グ スーヨン

その当時のオレは、
なんとかかんとかバイトで稼いで、
やっと女子のいるお店ってのにデビューしたわけだ。
女子のいるお店っていったって、
本州の西の端っこの下関っていう田舎町。
それも三十数年前。
そんなんだから、おおよその想像はつくでしょう。
スナックに毛の生えた感じのお店ですね。
その時代には、まだキャバクラというシステムのお店も存在してなかったし。

「おいグー、ちょっとこっちに来いっちゃ」
若いヤクザ風の男が、オレを呼んでる。
ばあちゃんの家に出入りしている若い衆だ。
オレは、口説きまくってる最中で、とっても忙しかったんだけど、
すぐにサッと立ち上がって、若い男の席に行った。
ほんの5mくらいの距離。

「なんすかねぇ?」
「すっ立っとらんで、ええけぇ、ここに座れっちゃ」
速攻で座りました。
「はい、なんでしょう?」
まさか、いきなり殴られたりはしないだろうけど、
とにかくオレは、ビビッておりました。

「こういう店の飲み方がのぉ、ぜんぜんなっちょらんのぉ」
通訳すると、
こういう女子のいる店での飲み方が、ぜんぜんダメだってこと。
「なっちょらんですか?」
「ぜんぜんなっちょらん」
「すんません」
速攻で謝っときました。
「デレデレとなぁ、必死で女を口説きよったらのぉ、みっとないやろうが」
「はい」
「居酒屋行ったら、もっと安う飲めるやろう、それなそい、なんでこんな高い店に来るんか? その理由っちゅうのを分かっちょるんか?」
「はい、女の子を落とせるかなぁ〜って」
「そうやろ、その通りぃや」
「そしたら、なんで女を口説いたらイケンのですか? あ、デレデレ口説いとるのがイケンですね?」
「デレデレとか、そんな態度のことを言うとるんやない、ぜんぜん違うっちゃ」

ちょっとコンフューズしてきましたね。
ここで簡単に整理しましょう。
こんな高いお店に来る理由は、女の子を落とすため、
なのに、女の子を口説いてはイケナイ、
と、このヤクザ風の若い男は言っているのですね。

「言うちょることが、よう分からんです」
「分からんかぁ、分からんやろう、そりゃ分からんけぇ口説いとるんやろうのぉ、ええか、
…男が高い金払うて飲むっちゅうのはよ、男の遊び方を磨くために高い金払っとるんじゃ」
「遊び方…ですか?」
「やけぇの、男を磨くんじゃ、そんでの、口説くんやないぞ、口説かれるようにならんにゃイケン
ピッキーン
オレの頭の中が、ショックで何かが弾けた気がした。
「それは、ど、ど、どうすりゃええんですか?」

その後、そのヤクザ風の男に、1つだけ遊び方っていうのを教えてもらった。
○お店で最初に口説くのは、女の子じゃなくて、黒服のトップを口説く。
○アフターも女の子と行くんじゃなくて、最初は男衆と行って仲良くなる。
○そうすると、店と信頼関係が築けるので、女の子たちが信頼してくれるようになる、で、そういう雰囲気を作り、口説かれるように、なんとなく話を進める。

後で分かったけど、その若い男はヤクザ風ではなく、ホンモノだった。

× 女の子を落としたい → 口説く → だいたい失敗
○ 店の人と信頼関係を築く → 女の子との信頼関係ができる → 口説かれる → 成功


そうですね。
こういう風に考えられるようになるための「いい加減な学習法」なんですよ!

簡単に言うとですね、
まず本質を探る気持ちがあってですね、
それからアイディアがあるんですね。



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