睡眠薬より先に、女性ホルモンを試すべき!
今回は、女性に限定した不眠のお話。40代、50代ごろから急に眠れなくなったという女性のみなさんに、快眠女王ヒサコがお届け。近ごろ眠れないのは……女性ホルモンが減ってきたせいかもしれません。ならば、解決はたやすい!?
「世の中に眠れない人がいるなんて、頭ではわかっていてもずっと感覚的に理解できませんでした。ところが、自分が更年期になってやっとわかりました。突然、不眠が襲ってきたんです。あぁ、このことか……みんなが眠れないというのは、この感じか……と」と、虎の門病院・産婦人科医、横尾郁子先生。
横尾郁子/よこおいくこ
産婦人科医。東京女子医科大学医学部卒業後、同大学産婦人科を経て、1992年より、虎の門病院勤務。現在は、虎の門病院付属『健康管理センター』で、予防医学にも取り組む。さまざまなデータに基づいた話はとてもわかりやすい。温かい人柄で人気の先生。
トイレに行きたいわけでもない、心配ごとがあるわけでもない。なのに下記のような症状がある場合は更年期のせいかもしれません。
□夜中にふっと目が覚めてしまう。それも何度も。
□ふとんに入ってもすぐには寝付けなくなくなった。
□なぜか朝早く起きてしまう。
□どうにも熟睡した感じがしない。
「でも、みなさん、ほてりやのぼせは更年期障害と知っていても、不眠が更年期のせいだとは思っていないので、すぐにはお話にならないのです。でも私のほうから、眠れますか?と伺うと、みなさん眠れません、とおっしゃる」(横尾先生)
だって、睡眠と女性ホルモンが関係しているなんて、ワタクシ快眠女王ヒサコも知りませんでした。
「女性ホルモンは、脳の視床下部や脳下垂体からの指令を受けて作られるのですが、更年期になると指令を受けても作れなくなります。すると脳のほうがパニックになり、なんとか作らせようとガンガン指令を出し続ける――と、同じように視床下部がコントロールしているほかの自律神経にも影響してしまうのです」
自律神経って、交感神経と副交感神経のふたつがあるやつですよね? これらのバランスが悪くなる、ということですか?
「そうです。会社でも、ひとりの人間が舞い上がって大騒ぎすると、周りの人が迷惑したり、仕事の能率が悪くなったりするのと同じです(苦笑)」
いますね、そういう人! ……えっ、もしかしてワタクシ……(汗)。いやいや、つまり、眠るときは副交感神経優位になってリラックスしないといけないのに、活動モードの交感神経が優位になってしまうというわけですね。
「さらに女性ホルモンが減ると、セロトニンも減る。セロトニンは睡眠ホルモンのメラトニンに分解されるんです」
へぇ……、女性ホルモンっていろいろなところで働いているんですね。
「そうなんです。ですから女性ホルモンが急激に減ると、さまざま不調が出てくるんです。でも足りないなら、少し足してあげればいい。更年期の不眠でまず試すべきは、睡眠導入剤じゃなくて、女性ホルモン。今日使えば数日で、遅くとも1週間で結果が出ます。それでもまだ眠れない、というときにほかの方法を試せばいいと思います」
更年期の不眠で受診すべきは、精神科や神経内科じゃなくて、婦人科なんですね。
「原因が女性ホルモン不足にあるなら、ほてり、のぼせ、発汗、不安や憂うつにも効果てきめんです。さらにお肌に弾力が出てきますし、髪の毛も抜けにくくなる。乾いた腟も潤うので、性交痛にも効果があります」
お年頃のワタクシにとっては、聞き捨てならない話ばかりですっ!!
「女性ホルモンの効果はまだあります。骨量の減少が抑えられるので、骨粗しょう症の予防になる、動脈硬化や老眼を遅らせる、脳細胞の衰えも緩和します。女性ホルモンはあらゆる臓器に関係しているので、全体の老化を遅らせることができるのです」
なんだか夢のようです。もうやるっきゃない! でもでも、ちょっと心配も。副作用は?
「5年以上使うと、乳がんリスクが少し高くなるというデータがあります。でも、上がらないというデータもあります。10年ちょっと前にアメリカで、脳梗塞、心筋梗塞、肺血栓、静脈血栓が少し多くなる、というデータが出たことがあります。女性ホルモンのエストロゲンには、血を固まらせやすい性質があるのです。ただ、10年前と今とでは薬が違います。昔は飲み薬でしたが、今は皮膚から吸収する。副作用も緩和されています。ただ、まだきちんとしたデータにはなっていません」
女性ホルモン薬は、お腹に薄いシールを貼るタイプ、ジェルを塗りこむタイプなどがあり、皮膚から吸収する。1日1回、2日に1回、1週間に2回など使い方はいろいろ。保健適用で3割負担なら、1つ30円~100円程度。月に保険なら1000円前後で、自費診療でも2000~3000円程度で受けられます。
(取材・文/眠りの女王ヒサコ)