人生に役立つ勝負師の作法 武豊
"長期休養明け"の捉え方は難しい!?


今年の日本シリーズは、4勝1敗で福岡ソフトバンクホークスが優勝。阪神タイガースの地元大阪では、「夢をありがとう」と叫びながら道頓堀川に残念ダイブしたファンもいたようです。勝ってもダイブ、負けてもダイブ……関西人気質は、こんなところにも現れ
るんですね。

それにしても、2戦目以降の阪神の元気のなさは、ちょっと意外なほどでした。
JRA60周年の記念イベントとして行われた、"アニキ"金本知憲さんとのトークショーで、「今年は勝てそうな雰囲気がある。勢いは阪神!」という言葉を頭のてっぺんまで信じ込んでいただけに(笑)、よけい、あれっ? という思いが強かったような気がします。と、ここまで書いて、「あぁ、競馬も同じだ」ということに気づきました。

言葉の魔力というのは、どんな世界にもあるものです。
「調子はどうですか?」「もう、バッチリ。最高の状態に仕上がってるよ」トレセンでは、新聞記者と調教師の先生の間で、毎日のように、こんな会話が交わされています。
「今の勢いなら、次のレースも楽にクリアできそう」「ここいらで負けるような馬じゃないからね」騎乗する騎手としても、頼もしい限りです。ただ、それでも競馬は、やってみないとわからない――。

調教師の先生が状態は完璧と太鼓判を押して、実際、返し馬ではまったく問題なさそうに見えた馬が、レースになったとたん、まるで走らなくなるということが現実に起こるのが競馬です。


ドバイW杯2着も休み明けで低評価

そう言えば、ランチを食べようとお店に入ったとき、たまに、"限定10食"などという張り紙を見かけることがあります。
この"限定"という言葉には、ミョーに心ひかれる響きがあって。僕も心がときめきます。でも、しばらく見ていると、アチコチからこの限定10食の注文がひっきりなしで……。すでに10は超えているはずなのに、それでも注文を受け続けていたりすることがありますから侮れません。

この限定とはちょっと意味合いが違いますが、競馬には、"長期休養明け"という言葉があります。これをリフレッシュしてきたと考えれば大きなプラス効果ですが、長期休養明けという言葉を聞いただけで、マイナスと捉える人が多いようです。
2001年11月11日に行われれたGⅠ「エリザベス女王杯」。この年の「ドバイワールドカップ」で銀メダルを取ったトゥザヴィクトリーでしたが、長期休養明けだったことが嫌われたのでしょう、4番人気に甘んじることになりました。

結果は、馬の頑張りとレースに合わせて、きっちりと仕上げてくれたスタッフの努力が実り、見事に優勝を飾ることができました。
11月16日は、この「エリザベス女王杯」が、京都競馬場を舞台に行われます。ライバルは出走してくる全馬。でも、僕とスマートレイアーも負けてはいません。ビッグタイトルは手の届くところにあります。

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