隠れて取り締まる時代は終了

鶴田「では、なぜ隠れて取締りを行ったりするんですか?」

A氏「う~ん、微妙だな~。当然、取締りというのは取り締まる必要があるからやるんですが、その必要性を担保するには、切符を切って"取締りをやっている"と思わせる必要がある。そう思わせることで抑止になるのであれば、隠れていようがいいという考えが、確かに私にもありました。ただ、今はそうじゃない。正義と国民の味方である警察が、制服を着てコソコソやっているのは、よく思えません。それを見て、子どもたちが"警察官になりたい"と思いませんもんね」

鶴田「では、何か策はあるんですか?」

A氏「本当に抑止するには、取締りの量よりも質を求めていかないといけないんです。そのためには、"隠れてやるなら指導にする"というのが、個人的にはいいと思うんです。やり方を考えて指導すれば、切符を1回切るよりも、大きな抑止効果が生まれる可能性がありますからね」

鶴田「それは素晴らしい!」

A氏「実際、"警察のイメージを下げるような取締りは、警察組織にとってプラスにならない"という幹部も結構いるんですよ。今回の御嶽山など災害現場で、"一人でも多くの方の遺体を、ご遺族にお返ししたい"という信念の下で頑張っている警察官がいる一方で、交通課では、ミスが次々に発覚し"税金ドロボー"と呼ばれてしまう。これでは取締りの現場のモチベーションも上がりません。"ミスがどうした""隠れてやっている"なんて言われて、我々もツラいんですよ(苦笑)」

警察の信頼回復のためにも、ぜひとも、適正な取締りの実現をお願いしたいものだが、ここに新たな懸念材料があるという。
来年末から、警視庁が交通違反切符の発行に、タブレット型の携帯端末を使用するという話が、それだ。なんと、これが実用化されるとわずか10分ほどで切符が切られてしまうという。

鶴田「国民は裁判をする権利を持っていますが、機械化されて、手短に切符が切られていったら、その権利が剥奪されることになりませんか? ドライバーは訝しがっていますよ」

A氏「機械化しただけで、"問答無用に罰則"とはならないと思いますよ。むしろ、"急いでるんだ!"というドライバーの利便性を考慮してスピードアップを図るのが目的だと思います」

鶴田「でも、結局、起訴猶予になって点数だけ引かれますよね」

A氏「警察とドライバーの永遠の問題ですね。ただ、間違いなく量から質へと変換はしていますよ」

優良ドライバーの疑問を真っ向から受け止めてくれた警察幹部のA氏。いくつかの疑念を晴らしてくれたとはいえ、我々は安全な運転を心掛けるとともに、より一層、警察の動きに厳しい監視の目を向けていく必要がありそうだ。

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