猫と暮らす孤独な老人から死体まで

日用品やゴミならば問題ないが、貴重品の扱いには注意が必要らしい。
「パソコンとか通帳、請求書、遺影なんかは赤いガムテープを貼って会社で保管します。こういうものは勝手に処分できないんです。その後?俺らは捨てるだけなんでわからない(笑)」

作業後、最後にドアに張り紙をし、カギ屋がカギを取り替えて、この日は終了した。
「基本、強制執行をされる側は現場には来ないもんですが、作業中に来て、"やめてくれ!俺の部屋だ!"って騒いで暴れることもあります。俺らは別に悪いことをしてるわけじゃないのに、なんだか辛い気持ちになりますね……」

その一方、こんなケースもあったという。
「東京の下町にあるその部屋には、お婆ちゃんが大量のペットの猫と住んでたんですが、なぜか、当日、作業を見守っているんです。で、"ありがとう、綺麗にしてくれて"って言いながら、俺らに金を配ろうとするんです。ボケちゃってるのか、状況を把握してないんでしょうね……」
近隣からの苦情か家賃の滞納か、事情はわからないが、孤独な老人のその後も気がかりだと言う。

「2時間に1回はリーダーの号令で休憩に入ります。道端での休憩中は、ほとんどがギャンブルと女の話。一応、腕章を巻いているから、通行人に眉をひそめられない程度には笑い声に気をつけながらですけどね」

そんな、どこにでもいる若者の彼ら。だが、その笑顔を一気に凍らせる現場もあるらしい。
「俺は実際には経験したことないけど、先輩から聞いた話だと、風呂場から死体が見つかったこともあったみたいです。大騒ぎになりそうなもんですが、"警察に任すぞ!さ、解散!"となって、5分で仕事が終わったらしいです」

日給で考えれば"美味しい"だろうが、後味の悪いトラウマになってしまいそうだ。

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