米国で100個の「脳」の標本がある日こつ然と姿を消すという奇妙な事件が起きた。しかも、その100個の中に悪名高い大量殺人鬼の脳まであったというのである。まるで映画のプロローグのようなこの事件。ネットを中心に様々な憶測を呼んだ事件ではあるが、その真相は未だ謎のままのようである。

2014年12月2日に起きた今回の事件。テキサス大学の研究室で保管されていたホルマリン漬けの脳は、重度のうつ病やパーキンソン病の研究対象として使用されていた。それがある日行方不明になってしまったというのである。今回の報道で多くの人を驚かせたのは、その100個の脳のうちに、テキサスタワー銃乱射事件で知られる殺人鬼チャールズ・ホイットマンの脳があったということである。

チャールズといえば、ビル屋上から銃を乱射し、母親を含む計46人というとんでもない数の死傷者を出したアメリカを代表するサイコキラー。彼の事件をキッカケに、特殊部隊SWATまで新設されたという歴史的な殺人鬼である。
そんなホイットマンだが、死亡後に解剖をしたところ、脳からクルミ大の腫瘍が見つかったという。研究者たちはこの腫瘍が彼の脳を圧迫し、攻撃中枢を刺激したのではないかとしている。

その脳が紛失したということで、ネット上では「何者かがホイットマンの脳を利用しようとしているのでは」など様々な憶測が立ったが、翌3日に『NBC News』が伝えているところによると、それは盗難事件などではなく、内輪による不始末であったというのだ。

テキサス大学の発表では、2002年の段階で大学職員の何者かが既に「脳」を処分していたという。標本の多くが保存状態が悪く、研究や教材としての資料には適さないと判断したという主張である。大学側のこの主張に懐疑的な声も挙がっており、脳が処分された経緯について追加調査が行われる予定だとか。

実は2013年12月に、同じくアメリカのインディアナ医学歴史博物館でも似たような事件が起きていた。このときは約60個の瓶詰めの「脳」が盗まれ、のちにオークションサイトに盗品を売り出していた犯人が逮捕されるという結末で幕を閉じた。
今回のテキサス大学の事件がそれと同じとは限らないが、100個の脳、しかも世界的有名人の脳まであるという。珍妙なコレクターの手に渡ってしまったのか、はたまた非正規のルートでどこかの研究施設に譲られたのか。真相は謎のまま、何やら奇妙な印象だけが残った事件である。

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