酒を飲みながらアドリブ演技
『トラック野郎』の撮影に携わったスタッフは、活気に満ちあふれた現場だったと、当時を振り返りながら話す。
「1日の撮影が終わったら連日のように宴会していました。酒場でトラック野郎たちが盛り上がるシーンの撮影では、ホンモノの一升瓶を使って、酒を飲みながらアドリブで演技したりしたもんです」
撮影現場での豪快なエピソードが語られる一方、健さんと同じで大スターらしく、私生活はあまり表に出さない人だった。
「文太さんが結婚したときも、披露宴を挙げると映画のイメージが崩れると言って、年賀状で知人に結婚の報告だけで済ませたりしていましたね。ただ、そんなことがあったからかどうかわからないけど、文太さんは文子夫人に頭が上がらなかったといいますね」(映画配給会社幹部)
愛妻家であると同時に、非常に家族思いな人物だったようだ。
「01年に俳優だった長男(当時=31)を踏切事故で亡くした際には、あまりにショックな亡くなり方だったこともあり、周囲に"もう、仕事する気にならないよ"と、柄になく弱気な面を見せていたね」(前同)
ただ、"昭和の頑固おやじ"らしく、子どもたちには厳しかった。実娘を知る人物によると、
「娘さんは若い頃に家出同然で家を飛び出したそうです。長男とは違い、彼女は芸能界にはまったく興味を示さず、海外に留学して現在もアメリカで生活しています」
しかし、そこはやはり親子。その生き様は父に通じるものがあるという。
「ボーイフレンドがアメリカ人のギャンブラーで、ポーカーで生活するプロなんです。そのためか、彼女もラスベガスのバックギャモンというゲームの大会で優勝して、数百万円の賞金を獲得していましたね。この10月に娘さんが日本へ帰国し、文太さんと一緒に出演しないかというオファーがテレビ局からあった際も辞退。その頑固さは、やっぱり父親譲りなんでしょう」(前同)
とはいえ、娘さんも文太さんのことを心底愛していたようで、
「彼女、父親の山梨の農園の名刺を知り合いに配って、嬉しそうに"今、父親はこんなことしているんですよ"なんて紹介していましたよ」(同)