憲法改正にこぎつけたい総理、地方に叛逆の火種を撒く防衛族、最後のチャンスに賭ける幹事長。今、決戦の火蓋は切られた――。

ニッポンの浮沈を左右する永田町新勢力図が、ついに決した。
「突然の安倍首相の衆院解散宣言(11月18日)から約1か月。首相の"消費再増税先送りとアベノミクスの信を問う"との旗印に、野党側は"アベノミクスの耐用期限は切れた"と真っ向対決。寒空を吹き飛ばす熱い選挙戦が各地で演じられました」(全国紙政治部デスク)

その天下分け目の一戦に審判が下された今、
「新政権は、早々に特別国会を召集(12月25日以降の予定)し、首班指名、ひいては組閣へと、慌ただしい年の瀬を迎えることとなります」(同)
バッタバタの師走の最中、最大のキーパーソン・安倍首相の動向に熱い視線が注がれている。
「解散・総選挙という大勝負を終えた首相は、今後、自らの政治信条の"憲法改正"、そして"戦後レジームからの脱却"に向けて、なりふり構わず突き進むと見られています」(自民党中堅議員)
どうにか選挙戦を終えた安倍首相だが、順風満帆かと言えば、さにあらず。
「情勢はまったく逆です。年明け早々に開催される通常国会では、国論を二分する集団的自衛権行使に関わる安保法制、さらには原発の再稼働など難問が山積しています。首相がよって立つ"アベノミクス"も、成果が出なければ、国民からの大反発必至です」(前同)

正念場の安倍首相だが、ここにきて不穏な影が。
まず、首相の地元・山口県で"お家騒動"が勃発しているというのだ。
「火元は、首相の"ゴッドマザー"こと洋子氏です。彼女は、岸信介・元首相の長女であり、安倍晋太郎・元外相の妻。同時に、安倍首相に政治家のイロハを叩き込んだ猛母でもあります」(地元の保守系県議)
その洋子氏が、なんたることか、安倍首相の後継者を指名したというのだ。
「三菱商事パッケージングの社長を務める長男・寛信氏の子ども、つまり首相の甥である孫・寛人氏です。すでに動き始めており、地元の後援会への報告と挨拶を秘密裏に始めたと聞いています」(前同)
つまり、いつ何時、足元をすくわれてもおかしくない状況にあるのだ。

他方面でも苦難の行軍を余儀なくされている。第1次安倍政権(06年9月~07年8月)を投げ出さざるをえなかった持病(潰瘍性大腸炎=難病指定、完治は困難)の悪化説が言われ、あの"政権放り出し惨劇"の二の舞も、とささやかれだしているのだ。
「先の臨時国会では、持病治療に使っている薬の副作用なのか、頻繁にトイレに。体調が良くないみたいで、ちょっとしたことでもイライラしてばかりでした。また、選挙戦当初、某テレビ番組に生出演したときは、"景気が良くなったとは思えない"との街頭インタビューにVTRは国民の声を反映していないとブチ切れ。国のトップにあるまじき、見苦しいまでの感情爆発を見せました」(ベテラン政治記者)
首相の体調を憂慮し、今、首相官邸と公邸では防衛医官が24時間態勢で待機。定期的な点滴まで行っているという。
「"高転び(人気絶頂でボロを出す)"は、永田町権力者たちの常。そんな首相を見て好機到来と、ギンギンに勃起(ヤル気十分の永田町言葉)する人たちも出てきました」(前同)

それが、巷間、ポスト安倍有力候補と目されている石破茂地方創生担当相と、谷垣禎一幹事長の2人だ。
まずは、"安倍首相の永遠のライバル"石破氏。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「今回の総選挙でも、八面六臂の活躍でした。多いときには1日10か所と積極的に地方を行脚。ちなみに、地方を回る際、今回の総選挙を"アベノミクス選挙"とする首相と違い、"日本創生選挙"と命名して喧伝。これは、安倍首相に対するファイティングポーズそのもので、選挙後は、自分が主役になると明言しているも同然です」

ギスギスした関係も、むべなるかな。安倍首相と石破氏の間に存在する怨念の溝は深い。キッカケは、第1次安倍内閣時に行われた参議院選挙(2007年7月)。自民党は歴史的大敗を喫し、1955年の自民党結党以来、初めて参院第1党の座を明け渡した。惨敗後、安倍首相の追及の急先鋒に立ったのが、誰あろう石破氏だった。

同氏は、「私だったら、即座に(首相を)辞めて、落ちた人のところに謝って回る」「首相が退陣しなければ、自民党が終わってしまう」
と、最後通牒まで突きつけて退陣要求をしたのだ。以後、「安倍氏は蛇のように執念深く、一度恨みを買うと絶対に許してもらえない」との永田町定説どおり、石破敵視は執拗に続いた。
前出・ベテラン記者が、こう言う。
「石破氏と安倍氏が争った先の自民党総裁選(12年9月)では、石破氏が自民党地方票を総ナメ。安倍氏の心胆を寒からしめました。これ以降、安倍氏は石破氏を最大のライバルと断じ、その処遇には細心の注意を払うことになるんです」

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