2014年11月、南フランスのポール・リカール・サーキットで行われた前代未聞のマッチレース。スタートラインに並ぶのは最高速度、時速320kmを誇るフェラーリ430スクーデルアと、車体にタンクを積み配線を張り巡らせた1台の自転車。

スタートの合図と同時に白煙を吹き上げる自転車を横目に、先に飛び出したのはフェラーリだった。さすがイタリアが世界に誇るスーパーカーと思わせたのは一瞬だけ。まばたきする間に形成は逆転、あっという間にフェラーリを置き去りにして自転車が走り抜けたのだった。

自転車が叩き出した最高速度は時速333km、停止から時速100kmまでの到達タイムはなんと1.1秒という驚きの早さ。停止から時速100kmまでの加速が3.6秒、最高速度320kmの430スクーデリアはまったく太刀打ちできなかったのだ。

この仰天記録を樹立したのは、フランスのスランソワ・ギッシーさん。自転車にロケットエンジンを積んだという狂気のマシンで、2013年に自分が記録した時速285kmを自らアッサリ更新したわけなのだが……。

「自転車にロケット積んだら自転車じゃないだろ」「ペダルはついているだけで漕いでいないじゃないか」といった異論もある。

日本工業規格によると「自転車とは、ペダル又はハンドクランクを用い、主に乗員の人力で駆動、操縦され、かつ駆動車輪をもち地上を走行する車両をいう」と定義されている。

そう言われると身もふたもないのだが、ロケットのパワーで車体が壊れたりバランスを崩して横転すれば大ケガをしかねない。そんなリスクを背負ってまで、次は時速400kmを目指すというギッシーさんの、男のロマンに難癖つけるのはナンセンスというもの。次はどんな走りを見せてくれるのか楽しみだ。

地上の乗り物で時速300km近いスピード感を体感したことがあるのは新幹線くらいしか思い浮かばないですが、自転車で体感する時速333kmって、いったいどんな感覚なんでしょうね?

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