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パンチ佐藤の「野球が一番!」
第4回 契約更改とシーズンオフ「プロ野球選手のお金の裏話」


2015年シーズンからBCリーグ『武蔵ヒートベアーズ』の宣伝本部長に就任したパンチ佐藤。かつての日本代表~オリックスのドラ1も、今では芸能人としての色が濃い。
そんなパンチが野球界に“復帰”して改めて思ったことは「野球が一番」ということだ。プロ野球が地域の意識を変えるカンフル剤になっている現実を、パンチ流に解説する!


NPB選手の契約期間は2月から11月まで。実は、1月と12月は(契約期間に)入っていません。ところが、給料はちゃんと1月も12月ももらえます。要するに、10カ月間の契約ですが、それを12に分割し、各球団が指定する給料日に振り込まれる仕組みなのです。

契約更改をみると、高卒ルーキーが一年間ファームで暮らしても年俸は480万円や500万円だったりします。ですが、実は全く裕福ではありません。グラブやバットは自腹。有名メーカーから提供される選手はホンの一握りです。まあ、某球団だけは、全選手にメーカーから提供されるようですが……。

バットは1本2万円が相場。それを100本揃える。グラブも1個というわけにはいきません。こちらも1個、万単位です。バット100本にグラブやそれ以外の備品でだいたい、250万円くらいは出ていきます。決して、割のいい仕事とは言えません。

とはいえ、プロ野球選手というブランドで勘違いする選手も少なくない。寮生活なので、日常生活は、それほどお金がかからないハズが、「プロ野球選手」というだけで近づいてくるオトナたちの餌食になってしまう。これは本人の問題が大きい。親や高校時代の監督の影響も多少はありますが、「今、自分が置かれている現状」を理解する能力がない選手は、まんまと罠にかかります。

僕はと言えば、大手ゼネコン(熊谷組)で社会人経験を積んだ上での入団だったので大丈夫でした。1年目は年俸800万円だったから、月当たりに換算すると額面で70万円。1年目はバットやグラブを買い揃えたため、皆さんがビックリするような金額は受け取っていませんでした。僕も寮生活を送りましたけど、金銭感覚が崩れることはなかったですね。

よく聞かれますが、「(プロ野球選手の)お金の使い道」は人それぞれ。家や車を購入し、「このローンを払うために頑張る」という選手もいますし、「宵越しの銭は持たず」ではありませんが、今ある幸せを謳歌する者もいました。

ちなみに、イチローは金銭感覚が派手になるということはありませんでした。彼はM社のバッグに普通のスーツ姿で遠征に現れていました。とはいえ、彼の素晴らしいこだわりはバットと道具。これにはトコトンお金を費やしていました。これこそ、チチローと言われた親父さんの教育そのもの。初の首位打者で購入したのが日産の車。比較的、地味でしたよ。

BCリーグの選手は、NPBのように契約金を12カ月の分割にしてもらっていないという話を聞きました。その結果、シーズンオフはアルバイト三昧。だから、月給に直したら月に10~20万円程度で生活しているという選手は多いと思います。同じプロ野球選手ですが、一番違うのはそこ。

「BCには夢がある」とは言っても、悪い言い方をすればラストチャンス。「こんな時に遊んでいられますか」です。もちろん、選手はそれを自覚しています。ぜひ、このハングリーさを観に来てください。仮に、チャラチャラしたやつがいたら、容赦なくスタンドから叱ってください。

「現実を受け入れ、一生懸命プレーするのか、しないのかでは、その人間の人生そのものを左右しかねない」と僕は思います。BCで夢や希望を捨てていない若者たちと泥臭く練習や試合に臨めば、必ず道は再び拓くと考えます。

最後に、僕が見てきた外国人で「超優良」の金銭感覚を持った選手をご紹介します。それはバース、ブーマー、ブライアントと横浜に在籍したローズ。「郷に入れば郷に従え」という諺がありますよね。「日本に来たら日本流」になれ、と。そう理解できる外国人選手が本当に活躍できるのだ、と僕はいつも思います。

バースは阪神電車、ブーマーは阪急電車、ブライアントは近鉄電車を利用して通勤していました。ローズに至っては、自宅から横浜スタジアムまで自転車で往来していましたよ。現状を案じるより現状を把握し、いかに前を向くか――BCもNPBもMLBもとどのつまりは一緒なのです。

野球が一番!

パンチ佐藤(ぱんち・さとう)プロフィール

1964年12月3日生まれ
亜細亜大学から熊谷組を経て、オリックスにドラフト1位で入団。プロ野球時代、トレードマークのパンチパーマと独特な発言で人気者に。引退後はタレントとしても活躍し、2015年シーズンからBCリーグ『武蔵ヒートベアーズ』の宣伝本部長に就任した。

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