『アルプスいちまんじゃーく こやりのうーえで♪』と子供の頃に歌いながら遊んだ経験はほとんどの人にあるのではないだろうか。
そんな、お馴染みの童謡「アルプス一万尺」の原曲はアメリカ合衆国の民謡で、独立戦争時の愛国歌である「ヤンキードゥードゥル(Yankee Doodle)」だ。
"ヤンキー"とはイギリス軍が植民地アメリカの軍隊を指して使っていた言葉で、"ドゥードゥル"とは「まぬけ」というような意味。一説によれば、イギリス人医師博士が北アメリカを舞台に1756年頃に繰り広げられた「フレンチ・インディアン戦争」の際、イギリス軍を応援するために集まった植民地軍の服装や装備がバラバラだったので、それをからかって作詞したともいわれている。
しかし、その内容に反して当の植民地の住民はこの歌を好み、アメリカ独立戦争が始まると原曲とは正反対の反イギリス的な替え歌が作られ、最終的には愛国歌として親しまれたそうだ。
日本では1853年にアメリカ海軍のペリー提督が海兵隊とともに久里浜に上陸した際、この曲が行進曲として初めて演奏された。この「ヤンキードゥードゥル」に日本語で登山にまつわる歌詞がつけられたのが「アルプス一万尺」で、作詞者は諸説あるが京都大学の山岳部の学生だという説が有力だ。

実は、この「アルプス一万尺」の歌詞は29番まであるのだ。

1番:アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを さぁ 踊りましょ
2番:昨日見た夢 でっかいちいさい夢だよ のみがリュックしょって富士登山
3番:岩魚釣る子に 山路を聞けば 雲のかなたを 竿で指す
4番:お花畑で 昼寝をすれば 蝶々が飛んできて キスをする
5番:雪渓光るよ 雷鳥いずこに エーデルヴァイス そこかしこ
6番:一万尺に テントを張れば 星のランプに 手が届く
7番:キャンプサイトに カッコウ鳴いて 霧の中から 朝が来る
8番:染めてやりたや あの娘の袖を お花畑の 花模様
9番:蝶々でさえも 二匹でいるのに なぜに僕だけ 一人ぽち
10番:トントン拍子に 話が進み キスする時に 目が覚めた
11番:山のこだまは 帰ってくるけど 僕のラブレター 返ってこない
12番:キャンプファイヤーで センチになって 可愛いあのこの 夢を見る
13番:お花畑で 昼寝をすれば 可愛いあのこの 夢を見る
14番:夢で見るよじャ ほれよが浅い ほんとに好きなら 眠られぬ
15番:雲より高い この頂で お山の大将 俺一人
16番:チンネの頭に ザイルをかけて パイプ吹かせば 胸が湧く
17番:剣のテラスに ハンマー振れば ハーケン歌うよ 青空に
18番:山は荒れても 心の中は いつも天国 夢がある
19番:槍や穂高は かくれて見えぬ 見えぬあたりが 槍穂高
20番:命捧げて 恋するものに 何故に冷たい 岩の肌
21番:ザイル担いで 穂高の山へ 明日は男の 度胸試し
22番:穂高のルンゼに ザイルを捌いて ヨーデル唄えば 雲が湧く
23番:西穂に登れば 奥穂が招く まねくその手が ジャンダルム
24番:槍はムコ殿 穂高はヨメご 中でリンキの 焼が岳
25番:槍と穂高を 番兵において お花畑で 花を摘む
26番:槍と穂高を 番兵に立てて 鹿島めがけて キジを撃つ
27番:槍の頭で 小キジを撃てば 高瀬と梓と 泣き別れ
28番:名残つきない 大正池 またも見返す 穂高岳
29番:まめで逢いましょ また来年も 山で桜の 咲く頃に

これに「ランラララ〜」とコーラス部分が入るのだが、山男でも最後まで歌えるのは少なそうだ。

この歌の「アルプス」は日本アルプスのことで、「一万尺」(約3030メートル)はその高さを表す。「子ヤギの上」でと間違って歌われがちな1番の「小槍の上」の「小槍」とは、槍ヶ岳の山頂(標高3180m = 10494尺)付近にある岩のこと。ロッククライミングの技術がなければ登ることができず、頂上は非常に狭いため、もちろん、そこで歌の調子に合わせて陽気に踊るのは不可能だ。

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