閣僚辞任も辞さずに喧嘩状!

なるほど、難所の連続である。さらに、7月には、北朝鮮の拉致問題の調査結果が判明する。ここで国民が望む回答が得られなければ、これまた安倍政権の能力が疑われる事態となる。
「実際、9月の党総裁選まで何がどう転ぶか、まったく読めない状況です。昨秋の内閣改造で小渕優子経産相(当時)、松島みどり法相(当時)の問題が取り沙汰されたとき、誰が衆院解散・総選挙にまで騒動が拡大すると予想したでしょうか? 政治の世界は一寸先は闇です」(鈴木氏)

難攻不落に見える安倍政権も一つ采配を誤ると、一瞬にして乱世到来となる。
"日本を取り戻す"どころではないのだ。

「その瞬間を、石破氏は息を潜めて待っているに違いありません。確かに石破氏は元日に、"総裁選には出ない"というニュアンスの発言をしました。しかし、今の段階で出馬を明言する政治家は永田町広しといえど誰もいない。自民党の抗争史を見ればわかるように、即座に潰されますから」(自民党幹部)

発する言葉の一つ一つを厳格に吟味する石破氏の性格を考慮しても、冒頭の不出馬宣言も、"死んだふり"と見るムキも多い。政治評論家の浅川博忠氏が、石破氏の策略をこう解説する。
「不出馬発言は、通常国会で予算が通るまでは内閣の一員として協力する、という意味だと思います。しかし、国会で重要法案が審議に入り、紛糾の事態となれば、好機とばかり、石破氏は首相と距離を置く挙に出てくる可能性は高いですね」
閣僚辞任も辞さずの姿勢で喧嘩状を叩き付ける――と、浅川氏は見ているのだ。

「石破氏は、今が政治家として旬なんです。言葉を変えれば、この時期に立ち上がらなければ、あとは立ち枯れていくのみ。それはご本人も十分に承知のはずでし、今は決起のタイミングを虎視眈々と見計らっていると思います」(前同)

では、石破氏が反逆の狼煙を上げる最良のタイミングは、いつだろうか。
「安倍首相にとって悲願の集団的自衛権が国会審議に入る5月が濃厚ですね。ここで、石破氏は安倍首相との対立軸である安全保障政策での相違点を明確にして閣僚辞任。野に下り、それまでの地方創生担当相としての実績を生かして、本格的な地方票固めに入るのでは」(同)

安倍首相と石破地方創生担当相は、安全保障に関しては真逆の立場である。
「安倍首相は集団的自衛権容認という形式を重視している。それに対し、石破氏は集団的自衛権よりも、現実に尖閣諸島で起こりうる脅威に対応する法整備を重視すべきとする現実主義者。両者とも、一歩も譲りません」(防衛省関係者)
早晩、激突の日が訪れるは避けられそうにもない。

加えて、石破氏は来る決戦の時に備え、密かに準備に東奔西走しているという。
「これまで疎遠だった自民党の長老連中と接触し、支援の取り付けに成功したと見られています。古賀誠・元幹事長や野中広務・元官房長官、それに青木幹雄・元参院議員会長や森喜朗・元首相らです。すでに議員を引退した彼らですが、いまだに永田町では隠然たる力を誇っています」(政界ロビイスト)

青木氏は"参院のドン"と言われた実力者。言わずと知れた森元首相は、安倍首相の出身派閥である清和研が森派と言われていた時代に、領袖を務めていた御大だ。
「これまで長老の面々は、"石破は出戻り組。小沢一郎らとともに新進党結成に参加するために離党して、自民党が下野する要因を作った"とし、石破氏を決して許しませんでした。しかし、青木氏をして"彼の執行猶予期間は終わった"と言わしめ、森元首相に至っては"説得力のある人"と絶賛するまでになっています」(前同)

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