「今年こそウチが優勝だ!」鼻息荒い野球ファンに贈る統計学的順位予想。数字が示したその結果やいかに!?

補強合戦も落ち着き、各球団それぞれの戦力が見えてきたプロ野球。そこで本誌恒例、科学的戦力分析法「SM(セイバーメトリクス)理論」に基づいた順位予想をしてみたい。

SM理論とは、メジャーリーグ生まれの統計学の手法を用いた戦力分析。今回も最終的な「優勝指数」を導き出すため、昨季の個人成績を数値化。投手ではWHIP、打者ではOPSと呼ばれる数値を用いた。
「WHIPは、被安打数と与四死球数の合計を投球回数で割った数字で、投手が1イニングあたり何人の走者を出したかがわかる。一方、OPSは出塁率と長打率を足したもので、勝利に対する貢献度の高さを示します」(野球専門誌編集者)

WHIPはいい選手ほど数値が低く、先発投手の場合、1.20未満ならエース級。1を割り込めば、球界を代表する投手となる。一方、OPSは.800を超えると平均以上、.900以上ならば、相当の強打者に当たる。
「WHIPとOPSの数値は、従来の打率、打点、本塁打数、勝ち星、防御率という数字に比べ、よりチームの勝敗に直結していると言われます」(前同)
事実、本誌は過去に同様の方法で、楽天の優勝や巨人の連覇を予測している。

今季の戦力分析の結果、思わぬ結果が導き出されたのがセ.リーグ。なんと、広島が悲願の24年ぶりのVを達成するというのだ。
WHIP、OPSともに、主力選手の数値が他のチームよりも抜きん出ており、優勝指数は97.5と高い数字となった。
「昨年から充実していた投手陣に、メジャーで5年連続2桁勝利を続けてきたバリバリのメジャーリーガー.黒田博樹が加わるわけですから、これは強力です。マエケンとの二枚看板で、15年のプロ野球をリードするはず」(スポーツ紙記者)
また、抜け目ない打線にも要注目。
「菊池、丸、田中と伸び盛りの若手が力をつけたうえ、ホームラン王のエルドレッド(OPS=.873)、3割3分3厘のロサリオ(OPS=.978)など外国人も超強力。リーグ制覇に戦力は整っています」(前同)

それに続くのが阪神で、優勝指数は93.86。
「補強に失敗したため、戦力の上積みはありませんが、最多勝.最多奪三振のメッセンジャー、最多セーブの呉昇桓(オスンファン)、首位打者のマートン、打点王のゴメスがいます。外国人戦力がそのまま残っているのは驚異的です」(スポーツ紙デスク)
だが、野球解説者の江本孟紀氏からはこんな不安も。
「昨年、外国人があれだけ活躍しながら阪神は優勝できなかった。全員が昨年と同じように活躍できるとは限りませんから、今年の阪神は少し心配です」
その江本氏が優勝候補に推すのは、巨人。
「優勝予想は巨人。昨年、あれだけ個人成績が悪い中で優勝したのは、やはり地力があるということです。セ.リーグはAクラスとBクラスの力の差が激しい。今年も、巨人、阪神、広島の3チームで優勝争いが展開されるでしょう」

その巨人の優勝指数は、2位阪神とはわずか0.05差の93.81。その差を埋めるか否かは、今年の巨人で行われる注目の"配置転換"の結果次第かもしれない。
「西村健太朗と澤村拓一がそれぞれ先発と抑えに入れ替わる。エースの菅野は故障明けですし、西村の先発転向はむしろプラスです。一方、抑えに回った澤村の課題は制球力。山口、マシソンとともに『新.勝利の方程式』を確立できるかに、チームの浮沈がかかっています」(前出.デスク)
山口鉄也のひじ痛やマシソンの乱調癖など、不安要素もあるが、戦力の厚みは抜きん出ている巨人。決して軽視はできない。

残る下位3球団の中で、不気味な存在がDeNA。
「グリエルの流出を阻止し、巨人からロペスを獲得したことで、打線に芯ができました。あと、昨年9勝を挙げた元メジャーリーガーのモスコーソが残ったことは大きい。ベテランの三浦や久保も安定感があります」(スポーツ紙記者)
昨季は巨人に唯一勝ち越したチームだけに、波に乗れば上位進出もありうる。
補強をせずに現有戦力で戦う中日、補強には成功したものの、投手陣が見劣りするヤクルトは、やはり優勝指数も低い。今年も厳しい戦いが続きそうだ。

一方のパ.リーグはどうか。12球団一のWHIPと、リーグ2位のOPSにより、ダントツの優勝指数97.9を弾き出したのが王者ソフトバンク。
「ポイントは、メジャー帰りの松坂がどれくらい勝ち星を挙げられるか。メジャーでは先発失格と評価されましたが、ソフトバンクではローテの一角に入ります。昔の剛速球はありませんが、多彩な変化球と老獪な投球術で、ホークス先発陣の良いアクセントになる可能性はあります」(前同)
その投手陣を支える打線は今季も超強力。松田宣浩、内川聖一、柳田悠岐、李大浩の「OPS.800超えカルテット」に加え、同.790の長谷川勇也も故障から復帰予定。工藤公康新監督のもと、盤石の布陣で、シーズンを迎えそうだ。

そのソフトバンクの最大のライバルとなりそうなのが、優勝指数95.7のオリックス。
40億円といわれる大補強で、メジャー帰りの中島裕之、日本ハムの小谷野栄一、DeNAのブランコを獲得。昨年の首位打者.糸井嘉男をトップに置く打線は、大きく厚みを増した。
「オフの手術で開幕に間に合うか微妙ですが、球界ナンバーワン投手.金子千尋の安定度はピカイチ。以下、新加入のバリントンや西、松葉ら先発組が仕事をすれば、佐藤、比嘉、平野という強力リリーフ陣が控えています。接戦をモノにできるチームです」(前出.記者)

ソフトバンクとオリックスの一騎打ちに待ったをかけるとしたら、優勝指数91.9で3位につけた伏兵.西武かもしれない。
特にメヒア、中村剛也とOPS.900を超える怪物打者を2人も抱えているのは12球団でも西武だけ。大砲2人の爆発で、波乱を呼ぶ可能性はある。
4位の日本ハムでは、やはり大谷翔平に注目。WHIP1.17に加え、OPSもチーム内で陽岱鋼に次ぐ.842という高い数値。彼が大車輪の活躍を見せれば、Aクラスも見えてくる。
ロッテと楽天は、ともに先発陣のコマ不足が明らか。今季も、苦しいやりくりを強いられそうだ。
「ロッテは絶対的なエースの不在が問題。一方、楽天は懸案だったクローザーに広島からミコライオを獲得。ただ、先発は結局、則本頼みですからね……」(前同)
はたして、実際のペナントレースはいかなる展開になるのか。"球春到来"が今から待ち遠しい!

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