経済の面からみると、風俗業界というのはある意味、飲食業界と似たような形態と捉えられるだろう。性風俗に行けば、ついでに飲み屋で一杯なんてことも多いし、キチンとしたルールに基づいた店なら、消費の増加に果たす役割も大きいと考えられる。

しかしながら、こんな声も聞こえてくる。
「2020年の東京オリンピックの開催で、首都・東京の風俗業界は、まさに壊滅的打撃を受けることになるはずだ」
警視庁の担当官がこう指摘する。

今から25年前、'90年に大阪で「大阪 花と緑の博覧会」が開かれた時のこと、大阪市内に立地するソープランドは、その全てが閉店に追い込まれることとなった。

建て前上は、業者サイドの自主的な閉店ということになっているが、実際には水面下で大阪府警からの強い“行政指導”があったのだ。大阪府警の狙いは、花博開催へ向けて、街中で看板を掲げて性風俗店が堂々と営業している状態をなくす、つまり街の浄化にあった。

そもそも合法的な風俗店は、警察庁が所管する風営法の管理下に置かれる。そして風俗店は、店舗型と非店舗型の二つに大別され、店舗型(正式には「店舗型性風俗特殊営業」と称される)にカテゴリーされるものとしては、ソープランド、ファッションヘルス、ストリップ劇場、ラブホテル、レンタルルーム、アダルトショップ、出会い喫茶などがある。そして非店舗型の代表例が、出張ヘルスということになろう。

現行の法律(つまり風営法)では、そうした業種に関して、一定の条件をクリアしさえすれば、営業してもいい、という形がとられている。

ただし、営業してはいけない区域(営業禁止区域)については、別途、都道府県が条例で定めるとしている。つまり営業区域については、都道府県が自由に設定することができるのだ。

このため、新規に店舗型の性風俗店を開業ができるところは、全国でもほんの数か所になってしまっている。となると業者は、非店舗型の性風俗店へ流れることになる。もちろんこの“非店舗型”とて、当局への届け出が必要なことは、いうまでもない。もし届け出がない場合は、違法風俗店ということで、それだけで摘発されてしまう。

しかし、届け出があるからといって、安心することはできない。なぜなら届け出書類の不備は、探せばいくらでも出てくるからだ。

「事実、ここ最近、都内の某警察署管内で、無店舗型業者に対して大規模な立ち入り調査が行われ、届け出書類の不備が見つかった業者に対しては厳重な注意がなされたのです。業者にとっては、相当なプレッシャーになったでしょう。」(前述の警察庁担当官)

こうした状況から考えても、性風俗業者を摘発するかしないかは、すべて警察のハラ一つなのだ。

'20年の東京オリンピックが開催されるにあたっては、大阪花博の時と同様に警察はそのメンツにかけて、街の浄化作戦に乗り出してくることになろう。
そうしたリスクにさらされていることを考えると、性風俗はもはやビジネスとしては成立しえない状況になっている。

リターン(利益)よりもリスク(損失)が大きいビジネスが成り立たないことは、どの業種、商売でも一緒だ。`20年までに、東京の性風俗は、かなりの数が姿を消すことになろう。


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