大相撲初場所で、格下の遠藤や安美錦を相手に、初日からまさかの2連敗を喫し、ファンを不安にさせたのが、西関脇・逸ノ城(いちのじょう)(21=湊部屋)。
3日目の取り組みで碧山相手に寄り切りで初白星を挙げると、4日目は琴奨菊に勝利して成績を五分に戻し、ようやく"自分の相撲"を取り戻したが、「この成績はらしくない」との声が相撲協会関係者から漏れ出ているのだ。
それは、「来年の今頃には、綱取り昇進がほぼ確実」(前同)と言われる期待の高さがあるから。

元日本相撲協会外部委員のやくみつる氏は、逸ノ城の魅力をこう話す。
「大きいという言葉では表せないスケール感と力を持ちながら、足の長さや腰の重さなど、とにかくバランスがいい。上背や体重では小錦のほうが上だし、巨漢なだけの力士ならほかにも多くいるが、巨漢であれほどしっかりと動けるのは彼だけ」
実際、彼はその体躯を十分に活かした相撲で異例ずくめの出世を遂げている。
昨年の九月場所で13勝という新入幕最多タイ勝利を記録をしたほか、史上初めて新入幕力士が横綱と2大関を破るなど、内容も秀逸。十一月場所では西関脇に昇進し、幕下付け出しから所要5場所での三役昇進という、昭和以降トップのスピード出世をしているのだ。

この稀代の力士の強さは、身長192センチ、体重202キロ、1メートルとされる太もも周りなど、人間離れした体格で支えられているが、その秘密は、出身地であるモンゴルにあると話すのは、スポーツ紙記者。
「逸ノ城は、海抜2000メートル超えの地で生まれ育ちました。遊牧民として、幼少期は移動式テントであるゲルに住み、常に移動していたそうです。生活の中心となる家畜の羊やヤギを守るためオオカミと闘っていたと語っていますから、彼の運動能力はそこで培われたものでしょう」

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